レプトスピラ症

【疫学】

    ◎ 急性熱性疾患であり、軽症では感冒様のみで治癒するが、重症型では黄疸、腎不全、出血傾向を呈す
    ・レプトスピラは1914年にワイル氏病病原体として本邦の稲田龍吉,井戸泰らによって発見された
    ・全世界では年間30万〜50万人が重症化していると推測されている
    ・高温多湿の熱帯、亜熱帯の雨期に多い
    ・日本国内での報告数は年間30例程度で、7〜10月に集中する

【感染経路】

    ・スピロヘータ目レプトスピラ科レプトスピラ属の細菌で、コルク栓抜き状の密な右巻きらせん形で、幅0.1µm、長さ6~12µmと非常に細長い
    ・鼠などの様々な野生動物、家畜、イヌなどに広く保菌されている
    ・これらの動物の尿に直接、間接的に、主として経皮的、あるいは経口的に感染する
    ・従って農業、土木工事、畜産業などに関わる従事者、あるいは河川などでのレクリエーションに関連して感染することが多い

【症状】

    ◎ 急性熱性疾患で発熱の4-5日後から黄疸、血小板減少、出血傾向を呈する場合はレプトスピラ症を鑑別する。疑う場合は、職業歴や河川でのレジャー、家畜やペットとの接触歴を確認する
    ・潜伏期は3〜14日
    ・臨床的に病期を2期に区分する

     第1期(菌血症期) 39度異常の悪寒戦慄を伴う発熱と眼球結膜充血が特徴的であるが、あとは全身倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛、食欲不振、下痢、腹痛、皮疹など非特異的
      ・腓腹筋の圧痛は特徴的

     第2期(免疫期) 2-3日の平熱期間をおいて黄疸、腎不全が進行、出血傾向(皮下出血、鼻出血、消化管出血など)を呈してくる(ワイル氏病)
      ・髄膜炎を合併すると激しい頭痛、不穏、せん妄、項部硬直などを認める
      ・心筋炎を合併すると不整脈を生じる

     ◎ 重症例の死亡率は5〜20%

【検査所見】

    ・白血球増多(軽度)、CRP上昇、血小板減少、AST、ALT、γーGTP上昇、BUN、CRNの上昇など
    ・重症型では高度のビリルビン上昇(AST、ALT上昇は3ケタ程度)、高度のBUN,CRNの上昇、著しい血小板減少、CPK上昇、尿タンパクの出現など
       ◎ DICを伴う敗血症は鑑別の対象となる

【診断】

    ① 血液、尿、髄液の分離・培養による病原体検出
    ② 血液、尿、髄液からのPCR法による病原体遺伝子の検出
    ③ 顕微鏡下凝集試験法(MAT)による抗体の検出(ペア血清で抗体値の上昇を確認)

    ・診断が確定すれば保健所への届け出義務がある(四類感染症)

【治療】

    ・PCG 150万単位 Div q6
    ・ABPC 1g Div q6
    ・CTRX2g Div q24
    ・DOXY 100mg PO q12
     治療期間はいずれも7〜10日間

     ◎ 治療開始後すぐにJarisch-Herxheimer反応と呼ばれる発熱、血圧低下を引き起こすことがある
    参考文献)
    1. 国立感染研究所「レプトスピラ症」
    https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/leptospirosis/detail/index.html
    2. 高橋 慶 他「詳細な病歴聴取により予測し得たレプトスピラ症の 1 例」日救急医会関東誌 39(2),2018年
    3. 齋藤光正 他「レプトスピラ感染症~ワイル病病原体発見から百年~」日本細菌学雑誌69(4):589–600,2014
    4. 酒井 達也 「沖縄県与那国島で感染したと思われるレプトスピラ症の1例」日病総診誌 2024:20(3)