深頸部感染

扁桃周囲膿瘍、咽頭側壁膿瘍、咽頭後壁膿瘍

  • 部位や病態によって区分される

    扁桃周囲膿瘍、咽頭側壁膿瘍、咽頭後壁膿瘍)

  • 扁桃周囲膿瘍:口蓋扁桃皮膜外側の扁桃周囲間隙の蜂巣炎である扁桃周囲炎が膿瘍に進行した状態

  • 発症は20〜30歳代で多く、小児・高齢者で少ない
  • 下極型扁桃周囲膿瘍は比較的高齢者に多く、炎症が喉頭に波及して急性喉頭蓋炎を発症しやすい(*1)
  • 咽頭後壁膿瘍は成人ではまれ。魚骨などの外傷が原因になることが多い
  • 咽頭後壁膿瘍では、椎間板園や硬膜外膿瘍を起こしやすく、また食道後壁にそって感染が波及するため、最悪の場合は縦隔炎になる
  • 扁桃周囲膿瘍、咽頭側壁膿瘍では頸動脈鞘に感染が波及する
  • 原因菌は溶連菌と黄色ブドウ球菌で70%強、嫌気性菌が30%弱
  • 抗生剤はABPC/SBT(嫌気性菌もカバーできる)

Lemierre`s syndrome

  • 内頚静脈の敗血症性血栓性静脈炎
  • 小児〜青年期の男性に多い
  • 頸部の腫脹や圧痛を認める
  • 起炎菌はFusobacterium necrophorumが多い
  • 敗血症性肺塞栓を合併することがある
  • 抗生剤はPIPC/TAZあるいはMEPMを少なくとも2週間以上静注で治療し、その後、内服に切りかえて最低でも合計4週間続ける
  • 抗凝固療法は推奨されない

Ludwig angina

  • 急速進行性の口腔底蜂窩織炎
  • 扁桃周囲膿瘍、下顎骨骨折、口腔内裂傷などが原因となる
  • 歯科治療、糖尿病、アルコール依存症、免疫不全などがリスク因子
  • 舌、口蓋底の腫脹を認める
  • 起炎菌は黄色ブドウ球菌、溶連菌など
  • 治療:気道確保を最優先とする
    • デキサメタゾン(初回10mg、以降、4mgを6時間毎に48時間まで続ける)
    • アドレナリン吸入(1000倍希釈)
    • ペニシリン系+メトロニダゾール+VMC
    • 膿瘍のドレナージ
参考文献
  1. 川畠雅樹 他「下極型扁桃周囲膿瘍の臨床的特徴」口咽科 2018;31(2):187~192
  2. 德田安春「病歴と身体所見の診断学」医学書院,2017
  3. 岡秀昭 「感染症プラチナマニュアル Ver.7」メディカル・サイエンス・インターナショナル 2021
  4. 鈴木正志 渡辺哲生「扁桃周囲炎・扁桃周囲膿瘍」 日本医事新報電子コンテンツ 2017-03-28登録