ウイルス性関節炎

ウイルス性関節炎

    ・ほとんどは一過性に経過するので臨床的にはあまり問題とならない
    ・ウイルス感染後1〜2週で発熱、全身倦怠感、上気道炎症状、発疹などとともに出現する
    ・関節炎は多様で多発性かつ炎症所見を伴う場合があり、他の関節炎との鑑別が問題となる場合がある

【ヒトパルボウイルスB19】

    ・小児の伝染性紅斑の原因ウイルス
    ・成人B19感染症では、紅斑は目立たずに多発性関節炎が主徴
    (症状)
    ・関節炎は手指、足趾、手首、肘、膝、肩など小関節にも大関節にも出現する
    ・朝の強ばりも生じる
    ・関節炎は通常2〜14非で招待するが、数ヶ月から年余に亘って持続する場合がある
    ・まれではあるがネフローゼ、急性糸球体腎炎が合併することがある

    (検査所見)
    ・肝障害、貧血、血小板減少、白血球減少、汎血球減少などを合併する
    ・パルボウィルスB19-IgM抗体(抗VCA-IgM抗体は斑が出現している妊婦について、このウイルスによる感染症が強く疑われ、IgM型抗体価を測定した場合」のみに保険算定が可能

    (治療)
    ・関節痛に対しては通常はNSAIDSの投与のみ
    ・DMARDSが必要になる場合は少ない
    ・ステロイドは持続感染を誘発しうるので原則投与しない

【C型肝炎ウイルス】

    ・HCV感染者の2〜20%に関節痛が出現し、RA様の多発関節炎を呈する場合が多い
    ・急性C型肝炎に伴って出現する場合と慢性C型肝炎や合併するクリオグロブリン血症に伴う関節炎がある
    (治療)
    ・NSAIDSあるいは少量のステロイドが用いられる
    ・重症のクリオグロブリン血症では大量にステロイド投与を行う場合がある
    ・リウマチ性疾患に対する生物学的製剤は有効で、比較的に安全に使用できるとされているが、HCVの動態に注意して使用すべき

【B型肝炎ウイルス】

    ・急性のHBV感染者の10〜25%に関節痛が出現し、RA様の多発関節炎を呈する場合が多いが、黄疸の出現とともに消失する
    ・合併するクリオグロブリン血症に伴う関節炎がある
クリオグロブリン血症性血管炎

【風疹ウイルス】

    ・RAに類似した手指の対称性関節炎を起こすことがある

【HIVウイルス】

    ・感染者の0.4〜12%に関節痛が出現
    ・単関節炎〜対称性の多発関節炎まで様々な病像

【伝染性単核球症】

    ・伝染性単核球症を呈する感染では多発筋痛や多発関節痛を呈することが少なくない
    参考文献)
    1. 佐々木毅「感染性関節炎」日本内科学会雑誌 第99巻 第10号・平成22年10月10日