サルモネラ感染症

サルモネラ感染症

  • サルモネラはその中が2,000種類以上の血清型に細分されており、チフス性疾患をおこすチフス菌(S .Typhi)およびパラチフス菌(S .Paratyphi A)も含まれる
  • ここでは食中毒の原因となるサルモネラについて概説する
  • 腸炎ビブリオと並んで最も多い食中毒原因菌のひとつ
  • 健康な成人では胃腸炎に留まるが、小児や高齢者では重篤になる場合がある
  • グラム陰性の嫌気性桿菌
  • ペット、鳥類、は虫類、両生類が保菌している

【症状】

  • 潜伏期は通常8〜48時間だが、1週間程度の場合もある
  • 初発症状は悪心、嘔気、嘔吐
  • 数時間後には腹痛下痢を起こす。下痢は数回~十数回で3〜4日持続(1週間続く場合もある)
  • 通常は2〜5日で回復する
  • 小児では意識障害、菌血症から痙攣を起こすことがある。高齢者では脱水症や菌血症により重症化しやすい
  • 菌血症では様々な器官に局在性化膿性感染巣を来たし骨髄炎,関節炎,心外膜炎,腹膜炎などを合併する。急性脳症の発症も報告されており、けいれん、意識障害などの中枢神経症状に注意する

38℃以上の発熱、10回/日以上の水様性下痢、血便、腹痛などを呈する重症例では本症を疑う

【診断】

  • 糞便、血液などの培養
  • 迅速診断法はない

【治療】

  • 健康な成人で重症でなければ抗生剤は用いない
  • 欧米では抗菌薬の投与によって腸内細菌叢が撹乱され、除菌が遅れるうえ、耐性菌の誘発、サルモネラに対する易感染性を高めるなどの理由で、単純な胃腸炎には投与すべきではないとの意見が一般的
  • 日本では、ニューキノロ ン薬の7日間投与は腸内細菌叢に対する影響もなく、除菌率も高いという成績に基づき、使用されている
  • 重症例では抗菌剤投与を検討する
  • わが国の非チフス性サルモネラの薬剤耐性率はABPCに20~30%、FOMに対し10%未満であり、ニューキノロン薬耐性はほとんどみられない

LVFX 500mg/日 7日間

参考文献)
  1. 国立感染症研究所「サルモネラ感染症とは」https://www.niid.go.jp/niid/ja/encycropedia/392-encyclopedia/409-salmonella.html
  2. 腸管感染症ワーキンググループ「JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ―腸管感染症―」
    https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/guideline_JAID-JSC_2015_intestinal-tract.pdf
  3. 儀保翼 他 「急性脳症を合併した腸チフスの1例」日大医誌 76 (2): 87–91 (2017)