レジオネラ肺炎
  • 好気性のグラム陰性桿菌だがグラム染色では染まらない
  • 49菌種があり、うち20菌種が人間に感染する。 うち80%以上がL.pneumophilaの血清型1による
  • 河川、溫泉(特に24時間循環型)、施設の冷却水、飲料水、ネブライザーなどで生息可能
  • 温度5℃〜50℃で生存可能で、25〜40℃は増殖に適した温度
  • 潜伏期間は2〜14日
  • 成人市中肺炎の0.5〜10%を占めているとされる
  • 臨床病形としては感冒症状のみで自然軽快するポンティアック熱もある
  • 血培陰性の心内膜炎の起炎菌となりうる
疑うべき状況
  • 喫煙者やステロイド、免疫抑制剤使用中高齢者の重篤な肺炎
  • 頭痛、意識障害、下痢などの肺外障害を伴う
  • 肝機能障害、CPK、LDHの上昇。PやNaの低下
  • βーラクタム剤無効の肺炎
  • 14日以内の溫泉旅行歴
  • 原因不明の感染症

症状と検査所見

  • 乾性咳嗽、発熱、悪寒、倦怠感、筋肉痛、下痢など非特異的
  • 呼吸器症状が明らかでなく、聴診で肺雑音を認めない場合は診断は困難
  • しばしば、無力感から精神錯乱まで様々な精神症状をともなう
  • AST,ALT,ALP,LDH,CPKの上昇
  • 低Na血症、低P血症
  • 画像では大葉性肺炎像を呈することが多いが、斑状影から多発性浸潤影まで多彩な所見を呈する。スリガラス状陰影の中に境界明瞭な浸潤影が混在するパターンが比較的特徴的

診断

  • 感度が高く、特異度が低いので、除外にはある程度有効だが、診断については限界がある
  • これで除外出来ない場合は、尿中レジオネラ抗原などの検査を行うようにする
確定診断
  1. 尿中レジオネラ抗原検査
    • 感度74%、特異度99% → 陰性でも感染を否定できない
    • L.pneumophilaの血清型1だけしか検出できない
    • 発症数日後から陽性化することが多いので発症初期には偽陰性になる可能性がある
  2. 迅速PCR検査(LAMP法)
    • 感度 91.3% 特異度 100%
    • 全てのタイプのレジオネラ菌を検出可能
    • 1〜2日で結果が出る
    • 高価で、検査可能な医療機関が限られる
  3. BCYE培地による培養法
    • 結果が出るのに1週間かかる

痰培養で起炎菌不明の重症市中肺炎で、溫泉旅行歴などの疑われる所見があれば、尿中抗原検査の結果によらず想定して治療する

治療

  • レボフロキサシン500-750mg 1日 1回(5-10日間)
  • アジスロマイシン 500mg 1日1回(5-7日間)
  • 重症な場合や免疫不全状態の場合は14-21日間まで延長
  • カルバペネムを含むβ-ラクタム剤は無効
参考文献)
  1. 岡秀昭「感染症プラチナマニュアルver.8」メディカルサイエンスインターナショナル 2023
  2. N Miyashita et.al. Validation of a diagnostic score model for the prediction of Legionella pneumophila pneumonia J Infect Chemother . 2019 Jun;25(6):407-412.
  3. 新里敬「レジオネラ肺炎」日内会誌 94:2275~2280,2005