インフルエンザ脳症
    ・2000年頃に疾患概念が確立された比較的新しい疾患
    ・定義: インフルエンザの経過中に急性発症する意識障害を主張とする症候群
    ・剖検脳や髄液中にインフルエンザウイルスを認めないことから、インフルエンザ脳炎ではなく「インフルエンザ脳症」と称される
    ・小児に多発するが成人例の報告も増加しつつある
    ・地域差無く、年間100万人あたり0.98人、成人に限ると0.19人の発生が推計されている(*2)
    ・男女差はなく、平均発症年齢52.7歳、平均入院期間26.3日(*2)
    ・欧米に皮脂、本邦をはじめとする東アジアに多い


【症状】

    ・初診時、意識障害を93%、痙攣を26%、異常行動を40%、髄膜刺激症状を13%に認めたと報告されている(*2)
    ・中枢神経症状だけでは無く、肝臓や筋肉などの逸脱酵素も上昇し、出血傾向も生じやすく、多臓器不全も稀ではない

【検査所見】

    ・中枢神経症状だけでは無く、肝臓や筋肉などの逸脱酵素も上昇し、出血傾向も生じやすく、多臓器不全も稀ではない
    ・AST、CKの上昇、血小板減少、PT低下などを認める
    ・頭部MRIでは発症早期からびまんせい脳浮腫や、急性壊死性脳症と呼ばれる両側の刺傷を中心とした病変を示すが、初期には検出率は45%程度
    Rye症候群
    ・インフルエンザや水痘などのウイルス感染後に、脳と肝臓に脂肪沈着が起こる重篤な疾患
    ・主に小児や若年層に発生する
    ・アスピリン(サリチル酸系薬剤)の使用との関連が指摘されている

【治療】

    ・副腎皮質ステロイド(主としてステロイドパルス療法)
    ・免疫グロブリン大量療法

【予後】

    ・疾患概念が確立された頃は死亡率30%、後遺症率25%と非常に予後不良だった
    ・その後の治療法の進歩により死亡率は10%弱に低下した
    ・急性壊死性脳炎では致死率は30〜40%、40%は神経学的後遺症が残存する
    参考文献)
    1. 市山高志「インフルエンザ脳症の病態解析と治療戦略」山口医学 第59巻 第1号 5頁~8頁,2010年
    2. 森田昭彦 他「インフルエンザ脳症成人例の解析」神経治療 36 262-264 2019
    3. 飯塚賢太郎 他「インフルエンザウイルス感染に伴った急性壊死性脳症の2 成人例」臨床神経 2020;60:157-161
    4. Davis LE, Koster F, Cawthon A. Neurologic aspects of influenza viruses. Handb Clin Neurol 2014;123:619-645.