帯状疱疹

帯状疱疹

【疫学】

人口1000人あたり年間4.15人。加齢とともに増加し、70歳代では7.84人に達する

【症状】

  • 70〜80%の例では、皮疹出現の2〜7日前に、疼痛、知覚異常、搔痒やアロディニアが出現する
  • 発熱、倦怠感、易疲労性などの全身症状を伴う
  • 通常例では、数日で水疱が膿胞化し、7〜8日後には痂皮をを形成、約3週間で治癒する
  • 痛みの程度は様々

【治療】

  1. 抗ウイルス剤
    • 皮疹発症から72時間以内に抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル)を1週間投与
      バラシクロビル(500)6錠 3x
      30≦GFR≦49 投与間隔 12時間毎
      10≦GFR≦29 24時間毎
      GFR<10 500mgを24時間毎
    • 高ウイルス剤投与で、皮疹の治癒、痛みの軽減、痛みの消失までの期間短縮が可能である
    • 早期投与が望ましい。72時間以上経過してから投与の有効性を示すエビデンスはない。しかし、慣行的には行われている(*3)
    • 高度免疫低下例、肺炎や脳炎にはアシクロビルの点滴投与も検討する
      アシクロビル
       GFR>50 投与間隔 8時間
       25<GFR≦50 投与間隔 12時間
       25<GFR≦50 24時間
      いずれも減量は不用
    • 腎機能低下例はアメナメビルの投与も検討。1日1回投与でよく、腎機能に応じた用量の調節は不用。成人の場合はアメナリーフ(200)2錠 食後
  2. 鎮痛

    ◎ 急性期に十分な鎮痛を行うことが、帯状疱疹後神経痛の発症防止に有効なことがわかってきている

    軽症例:アセトアミノフェンやNSAIDS。腎機能低下例ではNSAIDSは控える
    中等症以上:プレガバリンやオピオイドを用いる。オピオイドでは副作用に十分注意する。それでも効果が不十分であれば神経ブロックを検討する

    • リドカイン静注も行うことがある(*1)
      リドカイン1〜3mg/kg点滴静注 1日3回

【予防】

2016年から帯状疱疹の予防に水痘ワクチンが保険適応拡大された ① 水痘ワクチン ・ワクチン接種群では帯状疱疹の発生率が51.3%、PHN発生率が66.5%それぞれ減少し、重症度は61.1%に低下したと報告されている(*5) ② サブユニットワクチン(Shinglix®) ・帯状疱疹発症予防率89.8%。70歳以上では91.3%。帯状疱疹後神経痛については88.8%(*6)


参考文献)
  1. 眞鍋治彦 他「急性期の帯状疱疹の治療」日臨麻会誌 Vol.28 No.1/Jan. 2008
    https://www.emalliance.org/education/case/kaisetsu33
  2. 浅田秀夫「1.帯状疱疹」日老医誌 2021;58:48―53
  3. Robert H. Dworkin et al. Recommendations for the Management of Herpes Zoster  Clinical Infectious Diseases 2007;44:S1–26
  4. 日本ペインクリニック学会 「帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛」
    https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/pdf/shi-guide01_09.pdf
  5. Oxman MN, Levin MJ, Johnson GR, et al.: A vaccine to prevent herpes zoster and postherpetic neuralgia in older adults. N Engl J Med 2005; 352: 2271―2284
  6. Cunningham AL, Lal H, Kovac M, et al.: Efficacy of the herpes zoster subunit vaccine in adults 70 years of age or older. N Engl J Med 2016; 375: 1019―1032.