市中肺炎

    ・基礎疾患がないか、あるいはごく軽微な人に起こる肺炎
    ・本邦における死亡率は6.3%とけして油断できない病態
    ・これに対して、何らかの基礎疾患を有し、医療や介護の対象となっている人に起こる肺炎は院内肺炎(hospital-acquired pneumonia:HAP)および医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare-associated pneumonia:NHCAP)

    ・大きく異なるのは、原因となる微生物の種類。CAPでは以下のような原因が多い


    【診断】


      以下を評価して胸部レントゲン撮影の必要性を判断する
      症状)
      ・咳、痰、呼吸苦、胸痛など
      ・高齢者や免疫抑制のある患者では、食欲低下や活動性低下、歩けない、意識レベル低下などが主体となる場合もある

      バイタル、理学所見)体温≧37.8℃ 心拍数≧100/分 頻呼吸 酸素飽和度低下
      理学所見(胸部聴診) Crackleがある 呼吸音低下がある
      既往症) 喘息がない

    Heckerling Score

      バイタル)
      体温≧37.8℃  心拍数≧100/分
      胸部聴診)
      Crackleがある 呼吸音低下がある
      既往症)
      喘息がない

    合計点  
    方針  
      
    >

      単純レントゲン)

      ・細菌性肺炎では基本的には肺胞性陰影となる ・肺胞の最小単位は一本の終末細気管支とそれに連なる細気管支、肺胞などを含む細葉で大きさは5〜7mm。多くの細葉性陰影が融合する傾向が強く、小葉、肺区域、大葉などに拡大する

      consolidation
        均等な濃度をもつ肺胞性陰影。肺胞内の気体が液体あるいは組織によって置換されたときに生じると考えられる。ほぼ肺胞性陰影と同義
      air-bronchogram
        肺炎があると肺はwater-densityとなるため、気管支内のガスが透亮像として見えるもの

      ・ただし、65歳以上の高齢者で胸部CTで肺炎と診断されたCAP患者のうち9.4%では胸部レントゲン写真で肺炎像を確認出来なかったという報告がある(*1)

    胸部単純レントゲン読影の基礎

      胸部CT)

      ・CTを撮影しても、治療方針の変更、入院日数を含む予後の改善に結びつく場合は限られている
      ・CTは費用がかかり、また、患者を無視できない被曝にさらす
      ・したがって、胸部CTを撮影するのは以下のような場合に限定される

    【評価】

      ① 敗血症の除外
      ・まず第1に敗血症の有無を判断する
      ・qSOFAやNEWSを用いて敗血症の可能性と重症管理の必要性を評価する

      qSOFA・NEWS
      ② 重症度の評価
      ・A-DROP を用いて入院や集中治療の必要性を評価するのが一般的

      A-DROP
      ③ 細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別
      ・一般的には以下に示す鑑別法が用いられる
      ・必ずしも、十分な感度、特異度を持たない
      ・5項目中該当するのが3項目以上の場合は感度78%、特異度93%で非定型肺炎が、2項目以下の場合は感度84%、特異度87%で細菌性肺炎が推定される
      ・非定型肺炎を考える場合は、できる限り新型コロナウイルス感染を除外する

      遷移する
      細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別

      ④ 細菌学的検査
      ・ここまでの評価で外来治療が選択されたなら、一般的には細菌学的検査は不要
      ・入院加療になるのであれば痰培養は必須。可能な限り血液培養も行ったほうがよい
      ・軽症例においては、血液培養の陽性率は2%程度に過ぎないと報告されており、血培を行うか否かの判断は下の推奨を参考にしてもよい(*4)


      ・グラム染色が可能なら行うべきであり、治療効果の速やかな判定も可能になる。検体が良質で、検者の技能が十分であることが望ましい

    【治療】

     * 定型、非定型とも外来治療での薬剤選択に関しては、明確な使い分けの基準はない

      参考文献)
      1. 日本呼吸器学会「成人肺炎診療ガイドライン2024」
      2. Heckerling PS,et al. Clinical prediction rule for pulmonary infiltrates Ann Intern Med.1990;113(9):664-70
      3. 郡義明「胸部X線診断に自信がつく本」カイ書林 2010
      4. Torres A,et al. Bacteraemia and antibiotic-resistant pathogens in community acquired pneumonia: risk and prognosis Eur Respir J.2015;45:1353-63
      5. 岡秀昭「感染症プラチナマニュアルver.8」メディカルサイエンスインターナショナル 2023
      6. 高野哲史 「理論から攻める合格点の感染症診療」 日経メディカル 2024