院内肺炎

院内肺炎(hospital-acquired pneumonia:HAP)

【定義】

    ・入院後 48時間以上経過してから新しく発症した肺炎
    ・入院時すでに感染していたものは除かれる

【疫学】

    死亡率)
    HAPの死亡率は30.4%と非常に高い(*1)

    起炎菌)
    ・CAPと比べて耐性菌が多い傾向がある
    ・MRSAと緑膿菌が多く、肺炎球菌、MSSA、肺炎桿菌がそれに続く 

      注)
      ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia) 環境中に生息するグラム陰性桿菌。易感染性のある患者で肺炎やカテーテル血流感染を引き起こす。colonizationしていることも多く、治療するかどうかは慎重に判断する。様々な耐性因子を有しており、βラクタム、アミノグリコシドおよびフルオノキノロンなどに耐性を持つ
      アシネトバクター属 主として医療関連感染を生じるグラム陰性桿菌であり、自然環境中に広く生息しており、人の皮膚などにも常在する。通常、健常腎に感染症を起こすことはない。様々な耐性メカニズムを集積する能力があるので、βラクタム、アミノグリコシド、フルオノキノロンなどに耐性を獲得しやすい
      セラチア・マルセッセンス 環境中に広く分布するグラム陰性桿菌。元来、病原性は低く、通常は健常者には感染症を起こさない。免疫力低下のある患者に、肺炎、腹膜炎、敗血症、髄膜炎、尿路感染症などを引き起こす。種々の抗生剤に対する耐性を獲得しやすい
      エンテロコッカス・フェカーリス 基本的に弱毒性のグラム陽性連鎖球菌であるが担癌患者や腹部外科手術後に日和見感染症をきたすことが多い。亜急性心内膜炎、髄膜炎、尿路感染症などを生じる。多剤に対する薬剤耐性が問題となる

    【評価】

    重症度)   I-ROADを用いて分類する
      悪性腫瘍または免疫不全状態 SaO2>90%を維持するためにFiO2>35%*を要する状態
      意識レベルの低下 70歳以上の男性、あるいは75歳以上の女性 乏尿または脱水
      CRP≧20mg/dL 胸部X線写真陰影の広がりが一側肺の2/3以上
      ・原著論文で免疫不全状態、意識レベルの低下、乏尿、脱水の定義はなされていない

    重症度  

    【治療】




      参考文献)
      1. 日本呼吸器学会「成人肺炎診療ガイドライン2024」
      2. 岡秀昭「感染症プラチナマニュアルver.8」メディカルサイエンスインターナショナル 2023
      3. 高野哲史「理論から攻める合格点の感染症診療」 日経メディカル 2024
      4. 谷崎隆太郎「ジェネラリストのための臨床感染症入門」2022