壊死性筋膜炎

◎壊死性筋膜炎は重症感染症で死亡率が高く、早期診断が必要だが、発症早期には蜂窩織炎との鑑別が困難。発症24時間以内に適切な外科的デブリードマンを行わないと死亡率100%

【臨床所見】

初期に壊死性筋膜炎を疑う所見として

  1. 皮膚所見と不釣り合いな強い痛み
  2. 皮膚所見の範囲を超えて圧痛が広がる
  3. 意識障害・頻脈・血圧低下・頻呼吸など全身状態が不良
  4. 急速に拡大する皮膚所見

疑ったら感染症科、形成外科、整形外科などへ緊急でコンサルトする。壊死性筋膜炎の診断は,経験のある外科系医師による試験切開による直接の筋膜の確認が最も信頼できる

【超音波診断】

「対側と比較して4mm以上の液体貯留を伴う皮下組織の腫脹」で陽性と判断する。
この基準で判断し、筋膜石灰あるいは生検をgolden standardとした研究があり
感度88.2%, 特異度93.3%(LR+ 13.1, LR- 0.13)
と報告されている(*1)

【LRINEC score】

  • 2002年にWong CH(*2)らが提唱した、血液《→電子辞典》生化学検査血液生化学検査を用いた壊死性筋膜炎の診断ツール
  • 日本の研究でLRINEC score 6以上を壊死性筋膜炎とするためのカットオフ値とした場合,感度 100%,特異度 85.5%,陽性的中率 40.7%,陰性 的中率100%という報告がある。8点以上なら75%以上の確率とされる(*3)
    CRP(mg/dl)
    15より小さい 15以上
    WBC(/μl)
    15,000より小さい 15,000〜25,000 25,000より大きい
    Hb
    13.5より大きい 11.0〜13.5 11より小さい
    Na
    135以上 135より小さい
    Cre(mg/dl)
    1.59以下 1.59より大きい
    Glu(mg/dl)
    180以下 180より大きい

    スコア  
    壊死性筋膜炎の可能性  

【治療】

抗生物質
  • 血液培養(検出率20〜60%)および組織培養を行う

起炎菌が不明な段階
MEPM 1回1g8時間ごと または PIPC/TAZ1回4.5g q6h
+CLDC 1 回 900mg(1.5A) q8h
(MRSAが疑われる場合)VCM 初回25-30mg/kg  2回目以降15mg/kg q12h

デブリードマン
  • 24時間以内の適切なデブリードマンが必要
  • デブリードマンを行わない場合の死亡率は100%
参考文献)
  1. "Ultrasonographic screening of clinically-suspected necrotizing fasciitis"Acad Emerg Med . 2002 Dec;9(12):1448-51. doi: 10.1111/j.1553-2712.2002.tb01619.x.infections. Crit Care Med, 2004; 32: 1535-41.
  2. Wong CH, Khin LW, Heng KS, et al:The LRINEC (Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis)score: a tool for distinguishing necrotizing fasciitis from other soft tissue
    https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1197/aemj.9.12.1448
  3. 「壊死性筋膜炎と重症蜂窩織炎の鑑別診断における LRINEC scoreの有用性の検討」創傷 5(1):22-26,2014
  4. 岡秀昭「感染症プラチナマニュアルver.7」メディカルサイエンス・インターナショナル2021s