肺外結核

肺外結核

疫学

  • 全結核のおよそ3割が肺外結核
  • 肺内病巣から結核菌が管内性、血行性、リンパ行性に播種して全身に結核病巣を形成する。肺結核以外の結核症を肺外結核とよぶ
  • 胸部X腺が正常でも除外できない

肺門リンパ節結核

  • 乳幼児期から思春期に発症することが多い
  • (診断)
    X腺検査に加え、気管支鏡下生検、縦隔鏡下生検などで診断

頸部リンパ節結核

  • 肺外結核で最も多いのはリンパ節結核であり、その9割が頸部に生じる (病像の変転)
  • 通常は無痛性で緩徐に進行する
    1. 初期腫脹型 1〜数個の頸部リンパ節が孤立性に腫脹
    2. 浸潤型 リンパ節周囲炎により周囲と癒着して一塊となり、自発痛、圧痛を伴う
    3. 硬化型 やがて弾力性を失って硬くなる
    4. 膿瘍型 リンパ節の中心壊死により膿瘍化し、強い疼痛や皮膚の発赤を起こす
    5. 潰瘍瘻孔型 膿瘍が耳介したり瘻孔を京成したりする

リンパ節の結核は、リンパ節周囲炎を起こして周囲と癒着して可動性不良となり、自発痛や圧痛を伴うようになる。さらに進行すると中心壊死となり膿瘍化する。この段階の造影CTでは周囲がリング状に造影される

(検査)
  1. 胸部画像検査で結核病巣が確認できるのは3割未満
  2. 膿瘍型以降では造影CTでのリング状造影効果
(診断)
  1. リンパ節生検

結核性頸部リンパ節炎

胸膜炎

二つのタイプがある

  1. 特発性胸膜炎 感染原発巣から直接あるいはリンパ行性に波及して生じ、発熱と胸痛に伴って胸水が貯留する。若年者に多い
  2. 続発性胸膜炎 慢性肺結核病巣から炎症が波及して生じる。
(診断)
  1. まず画像診断で胸水を証明する
  2. 胸水の検査
    色調 通常は黄色調だが血清のこともある
    リンパ球優位
    ADA増加を示す場合が多い(カットオフ40IU/Lで感度92%、特異度89%)
     ⇒ ADA<40IU/Lでほぼ除外可能、>70IU/Lでは強く結核を考える
    塗抹培養の陽性率は60〜70%、PCRの感度は60%程度

尿路結核

  • 肺外結核でリンパ節結核についで2番目に多い
  • 血行性播種により腎痺室から髄質に感染を起こす
  • 乾酪空洞性の病変を作りやすく、破れて尿路に流れ、尿管や膀胱に波及する
  • 再発性尿路感染、酸性尿、無菌性膿尿、血尿などで疑う
(症状)
  • 初期は無症状
  • やがて膀胱刺激症状、血尿、精巣上体の効果、瘻孔、排膿などをきたす
  • 進行すると尿路閉塞から末期腎不全に至る
(診断)
  • 腎盂撮影で、腎杯の虫食い増、破壊増、変形像、空洞、膀胱鏡で結節、潰瘍、瘢痕などを認める
  • 尿塗抹検査は感度40〜50%、PCRの感度は不定
(治療)
  • 化学療法のほか、必要に応じて尿管拡張術、尿管吻合術、腎摘出術など

髄膜炎

  • 活動性結核の1〜2%で、もっとも予後不良
  • 多くは乳幼児にみられ、初感染に引き続いて起こることが多い
  • 最近では、糖尿病、腎不全、肝不全、悪性疾患、HIVなどの全身疾患や高齢、ステロイドや免疫抑制剤内服による低免疫状態の成人例も増えている
  • 早期治療で死亡率は低下するが、遅れると予後不良。治療が遅れれば1〜2ヶ月で死亡する
(症状)
  • 頭痛、発熱、嘔気、嘔吐、倦怠感。光過敏、音過敏
  • 理学所見としては頸部硬直、対反射遅延、動眼神経麻痺など
(検査)
  • 髄液: タンパク質の増加、糖・Clの減少、リンパ球を主とする細胞数増加、ADA増加
  • 脳CT: 脳質拡大、梗塞、脳底部異常造影効果
  • 脳MRI: くも膜下槽がT1で等信号、T2で高信号
(診断)
  • 髄液の塗抹や培養の陽性率は低い
  • ADA測定やPCRが有用なこともある
(診断)
  • 髄液の塗抹や培養の陽性率は低い
  • ADA測定やPCRが有用なこともある

髄液でリンパ球優位の細胞数増加を伴う進行性の無菌性髄膜炎では結核治療を考慮する

(治療)
  • 粟粒結核の準じて化学療法を行う
  • 副腎皮質ステロイドを併用することが多い

心膜炎

(症状)
  • 心不全徴候、心タンポナーデ ・寝汗、体重減少 (検査)
(診断)
  • 心嚢液塗抹検査の感度は低い。PCRで感度30%程度、培養は50%程度
  • 心嚢液ADAはカットオフ40IU/Lで感度87〜93%、特異度89〜97 %とされている ・心嚢液がリンパ球優位でADA上昇があれば強く疑う (治療)
  • 肺結核と同様

骨・関節

  • 胸椎下部より遠位の脊椎や股関節、膝関節に生じやすい
  • 一般に骨端部骨髄に結核菌が定着し、結核性肉芽腫となる。骨は打ち抜き様に吸収されカリエスとなり、肉芽腫の崩壊により骨膿瘍となる
  • 腰椎では膿瘍が腸腰筋や腸骨窩、大腿筋などに波及する(流注膿瘍)
  • 関節結核は股関節、膝関節に多い
  • 肺病変は必ずしも合併しない
(症状)
  • 初発症状は椎体では背部痛、腰痛、股関節や膝関節では関節の腫脹、疼痛
(検査)
  • X腺検査、CT,MRI、骨シンチグラフィーなどで評価する
(診断)
  • 骨生検、膿瘍中の結核菌検出

    慢性の治りにくい単関節炎や椎体炎では鑑別診断にいれる

(治療)
  • 化学療法と病巣の覚醒・固定

腸結核

  • 大部分は結核菌を含む喀痰の嚥下によって発生する ・肺に活動性結核を認めることが多いが、認めないこともある ・好発部は回盲部、空腸下部など ・病変はリンパ濾胞から始まり、潰瘍を生じる。腸管狭窄となることもある (症状)
  • 右下腹部痛、下痢、腹部膨満、発熱など (診断)
  • 便の結核菌検査、X腺および内視鏡検査による
    (治療)
  • 化学療法。狭窄が高度なら外科療法を併用

粟粒結核

  • 初感染時に起こることが多い血行性播種性結核症
  • 主に、小児や若年者に見られるが、近年ではcompromised hostで発病する例が増加している
    (症状)
    • 発熱、全身倦怠感、衰弱、食欲不振、体重減少
    • 咳嗽、胸痛、息切れ
    • 頭痛、腹痛など
    • 副腎結核を合併すると副腎不全を生じる
    • 10〜30%程度が髄膜炎を合併する
    (検査)
    • 胸部X腺 全肺野に均等な粟粒状陰影(直径1〜3mm程度)が認められる
    • 胸部CT 同様の所見だがさらに有用
      高熱があっても2〜4週間は異常所見のない場合がある
    (診断)
    • 喀痰塗抹は陽性率が低い
    • 喀痰、尿、胃液の塗抹、培養、PCR ・生検の診断率は比較的高い。肝生検(診断率88%)、骨髄培養(診断率66%)、経気管支肺生検(診断率46%)
    (治療)
    • 強力な化学療法
    • 全身症状が強い場合はステロイド

    結核
    結核性リンパ節炎
参考文献)
  1. 全身の結核」結核 第96巻 第3号 2021年5_6月
  2. 岡秀昭「感染症プラチナマニュアルver.7」メディカルサイエンスインターナショナル 2018