クリオグロブリン血症性血管炎

【概念と疫学】

  • クリオグロブリンは血清において低温にて沈降し、37℃に加熱すると溶解するタンパク質。無症状のこともある
  • 極めてC型肝炎ウイルスとの関連が強い
  • 免疫複合体性血管炎を示す患者をクリオグロブリン血症性血管炎とよぶ
  • 血管内で免疫複合体の沈降物が形成されることにより小血管に血管炎が生じる
  • クリオグロブリン血症には基礎疾患のない本態性と続発性がある
  • クリオグロブリンの構成、病態、関連疾患から次の3タイプに分類される
  • C型肝炎ウイルス感染症では40〜60%、膠原病では15〜25%がクリオグロブリン血症を続発する
  • クリオグロブリン血症の併存疾患としてはC型肝炎、Sjögren症候群などの膠原病、非ホジキンリンパ腫などがある

【症状・検査所見】

  • 全身症状と虚血による局所症状
    • 皮膚症状 他の症状に先行することが多い。C型慢性肝炎の経過中に皮膚病変を認めた場合は積極的にクリオグロブリン血症を疑う
    • 腎病変 無症候性血尿(約50%)、ネフローゼ症候群(約20%)、急性腎炎症候群(20〜30%)、腎不全(5%以下)
    • 神経病変 多発単神経炎を呈する
  • タイプによって症状や検査所見に特徴がある
  • そのほか、赤沈の亢進、CRP上昇が見られる

注)
= 過粘稠度症候群: 出血症状、神経症状、眼症状など(下のリンク参照)
血液学的症候:血栓症、出血、偽血小板増多症を含む

【診断】

はじめから血管炎を診断するのではなく、まず頻度の高い血管炎以外の疾患を除外したのち血管炎としての評価をはじめる

  1. 感染、悪性腫瘍、薬剤性の除外
    • 感染の中で特に感染性心内膜炎が鑑別場重要で有、血液培養および心エコーを行い、歯科治療の既往は必ず確認する
    • 悪性腫瘍の鑑別には頭部、胸部腹部CTなど全身的な画像診断が必須であり、さらに必要に応じて上部下部消化管内視鏡、腰椎穿刺などを行う
  2. ヨーロッパでの多湿雪共同研究により以下の暫定的分類基準が提唱されている

【治療】

  • 軽症では寒冷暴露を避けて保温を心掛ける。必要に応じてNSAIDSも用いる
  • 急速進行性の臓器障害があればステロイドと免疫抑制剤

【予後】

  • HCV感染の関与しない混合性クリオグロブリン血症の5年生存率は79%で、65歳以上の年齢、男性、呼吸器及び消化器病変の合併、および腎不全が予後不良因子
参考文献)
  1. 合同研究班「【ダイジェスト版】血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改定版)」https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_isobe_h.pdf
  2. 岸誠司 「クリオグロブリン血症」日内会誌 100:1289~1295,2011 3. 足澤萌奈美 他「B症状や末梢神経障害を契機に診断されたクリオグロブリン血症性血管炎の1例」臨床神経学 63巻、5号 291-297 2023