脊髄血管障害

脊髄血管障害

緊急治療の適応があるため適切な専門医にただちに搬送すべき

【疫学と病態】

  • 脳梗塞の1〜2%で比較的まれ
  • 前脊髄動脈は脊髄前面正中を縦走し、脊髄腹側の2/3(前策、側索、灰白質)を環流する。1本しかない
  • 後脊髄動脈は背側を走行し、脊髄背側1/3(後索)を環流する。2本ある
  • 従って、前脊髄動脈のほうが梗塞を起こしやすい
  • 静脈性梗塞もある

【臨床症状】

  1. 動脈性脊髄梗塞

    • 突然発症する髄節型の感覚障害±運動麻痺



    前脊髄動脈症候群: 錐体路と脊髄視床路が障害され、障害部位より遠位の対麻痺、解離性感覚障害*、膀胱直腸障害を生じる
    後脊髄動脈症候群: 後索が障害されるため、深部感覚障害を生じる

  2. 静脈性脊髄梗塞

    • 亜急性から慢性に発症する
    • 多くは脊髄硬膜動静脈瘻による
    • 下部胸髄から腰仙随にかけての病変が多い
    • 静脈うっ滞により、両下肢のしびれ、運動麻痺、排尿障害などが生じる
  3. 脊髄内出血

    • 突然発症
    • 礎に血管奇形や血管腫がある場合が多い
    • 疼痛を伴い強い対麻痺あるいは四肢麻痺を起こすことが多い
    • 頸椎部の硬膜外出血では、片麻痺を呈して症状が脳梗塞と類似することがある
  4. Brown-Séquard症候群

    • 脊髄の半側が障害されて生じる
    • 障害側の運動麻痺と触圧覚・深部感覚の低下、反対側の温痛覚障害

【診断】

MRIにて以下のように診断を進める

  1. 腫瘍や椎間板ヘルニアのような脊髄の圧迫や異常血管を示す所見がない
  2. 急性期特有の脊髄腫脹や脊髄前半部での高信号域(拡散強調画像、T2強調画像)を認め、同部位がGd-DTPA造影で増強される
  3. その上で他疾患を可能な限り除外できた場合に確定診断とする

【治療】

  • 適切な専門医にただちに搬送する
  • ステロイドパルス療法、バイアスピリンなど
参考文献)
1. 猿田享男 監修「1252専門家による私の治療 2021-2022年度版」日本医事新報社 2022: 脊髄血管障害 伊藤康信
2. Peter Guus著 半田肇監訳「神経局在診断」文光堂 1989
3. 小嶺幸弘「神経診察ビジュアルテキスト」医学書院 2002
4. Ben Greenstein,Ph.D.著 大石実監訳「カラー図解 神経の解剖と生理」メディカル・サイエンス・インターナショナル 2004