椎骨動脈解離

椎骨動脈解離

初期症状は後頚部痛、肩こり、めまいなどが多くさほど重篤には見えないことが多いが、見逃すと脳幹梗塞や、小脳梗塞、くも膜下出血を発症することもある

【疫学と病態】

  • 椎骨動脈解離は脳動脈解離の1形態である。これは若年者や中年層の脳梗塞の原因の10〜25%を占めるとされている
  • 本邦では硬膜貫通部に生じる頭蓋内椎骨動脈解離が多い
  • 脳動脈解離の発症頻度は、椎骨脳底動脈系:頸動脈系=3:1と椎骨脳底動脈系が高く、さらに椎骨脳底動脈系の解離の90%が椎骨動脈
  • 病態としては
    1. 解離に伴う椎骨動脈内の狭窄で虚血を来す
    2. 解離部分に椎骨動脈瘤を生じてくも膜下出血を起こす
    の2つのタイプがある
  • 血管狭窄が生じた場合、その灌流領域で脳梗塞などの虚血症状を起こす。塞栓症を繰り返すこともある
  • 椎骨動脈瘤からくも膜下出血を来す場合がある。この場合、発症から2週間以内に77%が破裂したと報告されている

【臨床症状】

  • 脳梗塞や脳出血を起こす前に前駆症状として突然発症の後頚部痛、頭痛、肩こり、めまいを示すことが多い
  • 症状は解離が椎骨動脈領域に限定されれば通常片側性だが、脳底動脈に及ぶと両側性になることもある
  • 発症の契機には以下のようなものがある
    頸部を急に強く回旋、伸展する。
    後頚部を強く圧迫する。
    頸部への指圧や、マッサージ。
    スポーツ関連ではゴルフや、クロール泳法、テニスなど。
    軽く回旋するだけでも起こりうるし、これらの誘因がなくても生じることもある

【診断】

  • 頭蓋外動脈解離のCTAは、感度62.5%、特異度 80.0%。MRAは感度87.5%、特異度90.0%と報告されている
  • ある程度解離が進行しないとMRIに反映されない場合もあるので、強く疑う場合は繰り返し撮影する
  • BPAS(Basiparallel anatomic scanning)
    MRAが血管内腔を反映するのに対し、BPASは椎骨脳底動脈の外観を表示するため、この2つの方法で示される血管径に差があれば椎骨動脈解離が疑われる
  • 確実な診断には血管造影検査が必要

【治療】

  • 入院の上で血圧管理は必須。高圧目標は大動脈瘤に準じて120/80mmHg以下
  • 血管狭窄を来した場合は抗血小板薬、抗凝固薬などが用いられるが、明かな効果を示すエビデンスはない
参考文献)
  1. 日本循環器学会/日本血管外科学会合同ガイドライン「2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン」
  2. 芦田真士 他「椎骨動脈から後大脳動脈におよぶ動脈解離をきたした脳梗塞の1例」臨床神経 2017;57:446-450
  3. 塩見佳子 他「椎骨動脈解離によるめまい症例」 耳鼻臨床95:12;1213~1218, 2002
  4. 有竹洵 他「脳塞栓症を繰り返した椎骨動脈解離の1例」 脳卒中 J-STAGE 2022年4月25日 早期公開
  5. 外山祐一郎 他「後頭部痛のみを呈し、積極的降圧療法で良好な転帰を得た椎骨動脈解離の2例」 脳卒中 37: 428–433, 2015