急性心不全の治療
  • Nohria-Stevenson分類とクリニカルシナリオ(CS)分類に基づいて評価を行い初期治療を試みる


【クリニカルシナリオ(CS)分類に基づく治療戦略】

  • どのタイプであっても酸素化は非常に重要。必要に応じて 酸素投与、NPPV

【CS1】

高血圧性心臓病を背景に拡張機能障害が生じ、後負荷ミスマッチ(「心不全の病態」参照)によって急性肺水腫を発症することが多い

(治療指針)
  1. 血管拡張薬
    • 静脈ルートを確保する前に硝酸剤を舌下、あるいはスプレー投与する
    • 大動脈弁狭窄症、閉塞性肥大型心筋症、腎機能低下例などでは過剰な高圧を生じることがあるので注意する
    • 原則的に硝酸薬を用いる。ほか、ニコランジル、カルペリチド
    • 左室収縮障害を伴う場合にはCa拮抗薬の使用は推奨されない ② 利尿薬 体液貯留のある場合に限って投与。CS2の患者と比較して必要性は低い

【CS2】

体液貯留が主体の心不全で、心機能の低下、腎機能障害や神経体液性因子の亢進を背景に緩徐に発症する

  1. 利尿薬
    • 通常ループ利尿薬であるフロセミドが用いられる
    • フロセミド20〜40mg以上必要な場合はトルバブタンを考慮する
    • トルバブタンは原則的に入院のうえ導入
  2. 血管拡張薬

【CS3】

  • 体液貯留の無い場合には容量負荷を試みる
  • β阻害薬はショック状態で無い限りは続ける
    1. 強心薬 ドブタミン、ホスホジエステラーゼ阻害薬
    2. 血管収縮薬

【心臓リハビリテーション】

  • 心不全患者には高齢者が極めて多く、入院を契機として寝たきりになったり大幅にADLが低下してしまうことが多い
  • 筋量や筋力は心不全患者の予後と 密接に関連
  • サルコペニアを予防するためにベッド上からの早期のストレッチや筋力トレーニングを含む早期のリハビリ導入し、有酸素的な運動療法へ展開させる

心不全の疫学と分類

心不全の病態

心不全の診断

急性心不全に用いる薬剤

心不全慢性期の治療

心不全の予後

レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系

参考文献)

  1. 「急性・慢性心不全診療ガイドライン2017」日本循環器学会・日本心不全学会合同ガイドライン
  2. 木田圭亮「急性心不全」日内会誌 109:199~206,2020
  3. 絹川真太郎「心不全の急性期治療戦略:現状と課題」心臓 Vol.48 No.9(2016) 4. Roberts E, et al : The diagnostic accuracy of the natriuretic peptides in heart failure : systematic review and diagnostic meta-analysis in the acute care setting. BMJ 350 : h910, 2015. doi : 10.1136/bmj.h910.
  4. C.S.Wang et.al. "Does this dyspneic patient in the emergency department have congestive heart failure?" JAMA.2005 Oct 19;294(15):1944-56. doi: 10.1001/jama.294.15.1944.
  5. G.W.Moe et.al."The 2014 Canadian Cardiovascular Society Heart Failure Management Guidelines Focus Update: Anemia, Biomarkers, and Recent Therapeutic Trial Implications" Canadian Journal of Cardiology 31 (2015) 3-16