心不全の疫学と分類

【定義】

  • なんらかの心臓機能障害、すなわち心臓に器質的異常と機能的異常のいずれかあるいは両方が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群

【疫学】

  • 日本における死因別死亡総数の順位では、心疾患による死亡は悪性新生物(癌)に次ぎ、心疾患のなかでは心不全が最も多い
  • 欧米でも本邦でもHFpEF(【分類】①参照)は心不全患者の50%を超える
  • HFpEFとHFrEFの入院率、死亡率は大きな差が無いが、前者のほうがやや良好
  • 急性心不全の基礎疾患でも最も多いのは虚血性心疾患、次いで高血圧、弁膜症
  • 本邦で行われたJCARE-CARD研究(心不全入院患者の前向き観察研究)では
    • 心不全患者の院内死亡率 約8%
    • 再入院率 6ヶ月以内 27% 1年後 35%
    • 心不全患者の平均年齢は71歳で80歳以上の割合が約3割
  • 年間死亡率は心不全全体で7-8%。NYHAⅢに至ると20-30%にもなるとされている
  • BNPが100pg/mLの増加は35%の死亡率増加につながると報告されている(*4)

【分類】

  1. LVEFによる分類
    • 急性期、慢性期に用いられる。左室機能によって、治療方法や評価方法が変わる

  2. 進展ステージによる分類
    • 心不全リスクはあるが無症候の時期から治療を始めることが推奨されている

  3. 運動耐容能を示す分類
    • ステージ分類ではⅢ、Ⅳに対応

  4. 身体所見から血行動態を評価するための分類
    • うっ血所見と低灌流所見から病態を4つに分類
    • 短期間死亡率はProfile CとBで高い

  5. 急性心不全の初期対応のための分類
    • 血圧を参考として肺水腫、溢水、心拍出量を考慮して分類する
    • 実際には多くの場合は上記の3つの病態が混在している。ある時点でどの病態が主体であるかを判断し、経過に伴い再評価を繰り返して治療法を修正する


心不全の病態

心不全の診断

急性心不全の治療

急性心不全に用いる薬剤

心不全慢性期の治療

心不全の予後

レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系
参考文献)
  1. 「急性・慢性心不全診療ガイドライン2017」日本循環器学会・日本心不全学会合同ガイドライン
  2. 井出友美 他「レジストリに学ぶわが国の心不全の臨床」福岡医誌 109(3):45―56,2018
  3. 坂田泰彦 他「心不全の疫学: 心不全パンデミック」日内会誌 109:186~190,2020
  4. Doust JA, Pietrzak E, Dobson A, et al: How well does B-type natriuretic peptide predict death and cardiac events in patients with heart failure: sys- tematic review. BMJ 330(7492): 625, 2005.