腎血管性高血圧
  • なんらかの原因によって腎動脈本幹に狭窄が生じ、レニン・アンジオテンシン系が亢進して血圧上昇をきたす疾患
  • 高血圧患者の1〜5%
  • 大部分は動脈硬化が原因。高齢者では動脈硬化による両側病変も多い。若い女性でも線維筋性異形成がある
  • レニン・アンジオテンシン系の血液検査が正常でも否定できない
腎血管性高血圧を疑う所見
  • 当てはまるものをチェック
    • 30歳以下または55歳以上に発症した重症高血圧 急に増悪する高血圧、悪性高血圧
      突然の肺水腫 治療抵抗性高血圧 ACE阻害薬またはARB開始後の腎機能障害の増悪
      低K血症、特に腎機能障害があるのに低K血症となる 腎サイズの左右差(1.5cm以上)
      腹部の血管雑音 冠動脈硬化など他の動脈硬化病変がある患者


    方針 

【診断】

  • 収縮期〜拡張期にわたる腎血管雑音聴取の陽性尤度比は39
  • Gold standardは腎動脈造影。しかし、腎障害を伴うことが多く困難なことが多い
  • MRアンジオグラフィ:ヨード造影剤を用いないので最も一般的
  • 腎シンチ・スキャン
  • 腎動脈超音波ドプラ法:非侵襲的であるが、技術的な難易度が高い

【治療】

  1. 第一選択薬はACE阻害薬やARB。降圧不十分であれば、Ca拮抗薬、利尿薬、β遮断約、中枢性交感神経遮断約などを追加
    • RCTではないが腎障害の進行を著明に抑制し、生命予後も改善したという観察研究がある(*)
    • 腎血管性高血圧患者のコホート研究(n=3570)で、ACE阻害薬やARB内服群は透析導入についてはハザード比0.62で有意に低かった(*)
    • しかしながら、急性腎障害のリスクは上昇する。特に使用開始直後に起こりやすいので、ACE阻害薬、ARBは入院させた上で開始すべき。外来でも1週間に1回は評価すべきである。クレアチニンが投与前の1.3倍以上に増加したら中止すべき
  2. 血管拡張+ステント留置
    • 降圧効果や腎障害抑制について降圧剤治療と同等であり基本的には行わない
    • 高度狭窄例ではステント留置で腎機能が改善する例もある
参考文献)
  1. 熊谷裕生 他「腎血管性高血圧の診断と治療」 日内会誌 107巻 9号 1753〜1760. 2018
  2. 日本超音波医学会「超音波による腎動脈病変の標準的評価法(案)」Jpn J Med Ultrasonics Vol.41 No.3 2014 3.Losito A, et al : Long-term follow-up of atherosclerotic renovascular disease. Beneficial effect of ACE inhibition.Nephrol Dial Transplant 20 : 1604-1609, 2005.
  3. Hackam DG, et al : Angiotensin inhibition in renovascular disease : A population-based cohort study. Am Heart J 156 : 549-555, 2008.