- ステージ分類およびLVEFによる分類に基づいて治療方針を検討する
疾患
循環器 (22)
1.
心不全
┗ 心不全の疫学と分類
┗ 心不全の病態
┗ 心不全の診断
┗ 急性心不全の治療
┗ 心不全慢性期の治療
┗ 急性心不全に用いる薬剤
┗ 心不全の予後
┗ レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系
2.
急性冠症候群
┗ NSTEMI
┗ 心筋のバイオマーカー
┗ TIMI risk score
┗ 心筋梗塞を疑う現病歴
3.
ショック
4.
大動脈解離
┗ ADDスコア
┗ マルファン症候群
8.
肺血栓塞栓症(PE)
┗ Well'sスコア
9.
深部静脈血栓症
┗ DOAC
┗ 抗凝固療法
┗ 抗凝固薬の切り替え
┗ 大腿静脈の走行
┗ 下肢静脈エコー
10.
腸骨静脈圧迫症候群
11.
腸間膜虚血症
12.
腎梗塞
13.
脾梗塞
14.
急性下肢動脈閉塞
15.
椎骨動脈解離
16.
脊髄血管障害
17.
心膜炎
18.
上大静脈症候群
19.
腎血管性高血圧
20.
腎実質性高血圧
21.
起立性低血圧
21.
肥大型心筋症
22.
頻脈整不整脈の初期治療
23.
循環器疾患の手術適応
24.
電気的除細動
心不全慢性期の治療
【ステージ分類に基づく治療戦略】

【ステージA・B】
- ステージAでは高血圧、脂質異常症、糖尿病などのリスク管理
- ステージBでは陳旧性心筋梗塞、弁膜症などの管理と治療 (治療指針) β遮断薬、ACE阻害薬、MRAを十分量投与する

【ステージC・D】
- ステージC・DではさらにLVEFに基づいた分類を適用する
1. HErEF
- β遮断薬、ACE阻害薬、MRAが極めて有効。さらにANRI(angiotensin receptor neprilysin inhibitor)がACE阻害薬よりも予後改善効果が高いことが示されている
【各薬剤の用い方】
-
ACE阻害薬
- 副作用が無い限り可能な限り増量する
- ACE阻害薬が使えないときにはARBを用いる
- ACE阻害薬とARBの併用は行わない
-
MRA
- スピロノラクトン、エプレレノン
- 禁忌が無い限り全例にMRAを投与すべき
- eGFR<30mL/分、あるいは血清K値>5.0mEq/Lの場合は慎重に開始する(スピロノラクトン12.5mg/日 エプレレノン25mg/日)
- 投与開始後、3日目、1週間後、以後3ヶ月までは毎月血清K値とクレアチニン値を測定することが推奨されている
エプレレノン
- 25m/日gから投与を開始。血清カリウム値、患者の状態に応じて、投与開始から4週間以降を目安に50mg/日へ増量
- 高血圧に対しては50mg/日から開始し、MAX100mg/日と使い方が異なる
-
β遮断薬
- カルベジロールあるいはメトプロロールを用いるが、カルベジロール使用群のほうが死亡率が低かったという報告がある
- 心拍数は75回/分未満とすることが望ましい
- NYHAⅢ度以上では、原則として入院のうえ導入する。増量には時間をかける
カルベジロール
開始量) 2.5mg/日 重症例では1.25mg/日
増量)3.75〜5mg/日 → 7.5mg/日 → 10mg/日 → 15mg/日 → 20mg/日ビソプロロール
開始量) 0.625mg/日
増量)1.25mg/日 → 2.5mg/日 → 3.5〜5mg/日HFrEFに対しては以上の3剤を十分に用いた後に、ARNIとSGLT阻害薬の適応を検討する
ARNI
- ARB(バルサルタン)とネプリライシン阻害薬からなる新たな治療薬
- ACE阻害薬(エナラプリル)よりも,ARNIが心血管イベントを抑制することが証明された
- ACE阻害薬やARBを可能な最大量まで投与しても効果が不十分な場合に投与を検討する
- ACE阻害薬とARNIの併用は禁忌であり、ARNI開始36時間前にはACE阻害薬を中止する
エンレスト
- 1回50mg1日2回で開始する。忍容性が認められる場合は、2〜4週間の間隔で段階的に1回200mgまで増量
SGLT2阻害薬
- 心血管病既往のある2型糖尿病患者の心不全予防に有効
- 近年、HFpEFの患者に対する有効性が示された(*4)
- 糖尿病のない患者での効果は確立していない
- 高齢者やフレイル患者にも一貫して心血管イベント抑制方向に働くことが明らかにされた
2. HFpEF
- HFpEFとHFmrEFでは死亡率や臨床イベント発生率の低下効果が前向き介入研究で明確に示されたものはない
- 症状を軽減させるための負荷軽減療法、および心不全増悪に結びつく併存症に対する治療が基本となる (負荷軽減療法 ≒利尿薬)
- MRAがHFpEFとHFmrEFにおいて初回入院および全入院のリスクを低減させたが、心血管死および全死亡は有意差が出なかったというメタ分析がある(*5)
- 本邦のJ-MELODIC 試験ではフロセミドよりアゾセミドのほうが心不全増悪抑制効果が大きかったと示されている
- 海外でもフロセミドよりトラセミドのほうがイベント発生率低下効果が優れているとする複数の報告がある
- トルバブタンも用いられるが、長期予後改善効果は確立していない
(併存症)
- 心房細動、頻脈性不整脈、徐脈性不整脈、冠動脈疾患、弁膜症、糖尿病、CKD、COPD、鉄欠乏など様々な疾患の管理が必要
心不全の病態
心不全の診断
急性心不全の治療
急性心不全に用いる薬剤
心不全の予後
レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系
参考文献)
- 「急性・慢性心不全診療ガイドライン2017」日本循環器学会・日本心不全学会合同ガイドライン
- 絹川真太郎「ステージ別心不全治療の現状と展望」日本内科学会雑誌 108 巻 3 号,2019
- Poole-Wilson PA, Swedberg K, Cleland JG, et al. Carvedilol Or Me- toprolol European Trial Investigators. Comparison of carvedilol and metoprolol on clinical outcomes in patients with chronic heart failure in the Carvedilol Or Metoprolol European Trial (COMET): ran- domised controlled trial. Lancet 2003; 362: 7-13.
- Anker SD, et al : Empagliflozin in Heart Failure with a Preserved Ejection Fraction N Engl J Med. 2021 Oct 14;385(16):1451-1461.
- Pardeep S Jhund et.al. Mineralocorticoid receptor antagonists in heart failure: an individual patient level meta-analysis. Lancet . 2024 Aug 30; pii: S0140-6736(24)01733-1.