腸骨静脈圧迫症候群

腸骨静脈が石灰化し蛇行した腸骨動脈と後方の腰椎により圧迫され、圧迫部分以下の血流が停滞し、下肢の浮腫や深部静脈血栓(DVT)の原因となる

  • 病態としては成人の約20%にあると言われておりけして稀ではない
  • 解剖学的位置関係から左下肢に多く左側DVTの62%に存在するといわれている
  • 左DVTを伴うICSは女性に多い
  • 下肢の浮腫を訴えて来院された症例や無症状の症例では下肢の左右にかかわらず潜在的ICSの可能性を想定する
  • 血栓性素因が表在性の血栓性静脈炎と関係している可能性がある。ICSとは別の視点から抗リン脂質抗体症候群をはじめとする膠原病やTrousseau症候群なども想定しておく
  • May-Thurner症候群、Cockett症候群ともいわれる

【評価】

  • 50%以上の狭窄、または静脈圧較差が2mmHgを超えれば血流障害が存在すると診断される ・下肢静脈瘤が左のみ存在する例では潜在性の腸骨静脈狭窄を疑い外科的ストリッピングを行う前に左右の静脈圧を計測する

【治療】

  • 静脈内血栓除去術や静脈バイパス術などの静脈系外科的治療の長期開存率は低いとされており、また、ステント留置後の長期開存率も不明
  • 急性期治療としてはヘパリン・抗凝固療法、血栓溶解療法、カテーテルを用いた血栓除去などがある
  • 再発予防としては、ヘパリン・抗凝固療法、ステント留置、下大静脈フィルターなどがある
  • それぞれの治療法の効果についてはいまだ評価は確立していない
  1. 中村 茂 他「腸骨静脈圧迫症候群に合併した急性深部静脈血栓症に対しステント治療を行った1例」J Cardiol 2002 Aug; 40(2): 71–78
  2. 戸口 佳代 他「右総腸骨静脈における腸骨静脈圧迫症候群の1例」2011 Vol. 22 No. 4 333
  3. 中島 隆之 他「右内・外腸骨動脈の圧迫による右腸骨静脈圧迫症候群の1例」日本血管外科学会雑誌 2023; 32: 165–168