肺血栓塞栓症(PE)
  • 血栓や塞栓によって肺動脈が閉塞する疾患で、急性あるいは慢性の肺循環障害をきたす
  • 患者の90%以上で下肢深部静脈あるいは骨盤内静脈の血栓症(DVT)を認める
  • DVT患者の役50%に肺血栓塞栓症が合併する
  • PEとDVTを合わせて静脈血栓塞栓症(Venous Thromboembolism:VTE)と称する

【病態】

  • おもな病態は急性の低酸素血症と肺高血圧
  • 低酸素血症は肺血管床の減少による非閉塞部の代償性血流増加と気管支攣縮による換気血流不均衡が原因
  • 急性のPEでは、肺血管床の30%以上の閉塞で肺高血圧が生じるとされている
  • 約10〜15%に肺梗塞を合併する

【症状】

  • 急性のPEの死亡率は11.9%と心筋梗塞より高い
  • 症状、理学所見、一般検査所見でPE/DVTの予防に特異的なものはない
  • 亜急性〜慢性に経過する場合は「不明熱」の鑑別診断に入る場合がある<

◎ 急激に出現した低酸素血症を伴う呼吸困難ではPEを考慮してWells scoreを評価する

Wells score(PE)

【検査】

心電図)

  • SⅠQⅢTⅢは急性PE/DVTの予防の10〜20%に過ぎないが、特異度は97.7%と非常に高く、見逃してはならない
  • V1〜V4の陰性T波(特異度98%)
  • 頻脈、右脚ブロック


心電図)

  • 呼吸性アルカローシスになることが多い

心エコー)

  • 閉塞血管領域が広い場合には、右室拡大、右室自由壁運動障害、肺高血圧など

【診断】

  • 胸部造影CTを行う
  • PEの診断において換気ー血流シンチグラフィーよりも優れている
  • 診断したらプロティンC、プロティンSや悪性疾患の検索を行う

【治療】

急性期)

心停止、ショックあるいは低血圧のある場合 抗凝固療法、血栓溶解療法、血管内治療
軽症〜中等症 抗凝固療法

抗凝固療法

【予後】

  • 急性PEの死亡率は高く、特に発症時にショックを呈する重症例では18〜33%に達する
  • 重症例で診断が遅れた場合は死亡率68%と高いが、早期に診断できると22%程度となる
  • PE再発率は2.3%

PEと診断したら、かならず背景として腸骨静脈圧迫の評価を行う

腸骨静脈圧迫症候群
参考文献)
  1. 「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予後に関するガイドライン」(2017年改訂版)
  2. 山田典一「最近の静脈血栓塞栓症の診断(総論)」  血栓止血誌 24(4): 351-356,2013
  3. 横江琢也 他「肺血栓塞栓症」昭和学士会誌 第77巻 第 6 号〔 661-674 頁,2017 〕
  4. 小野正博 他「50代男性が呼吸困難で救急搬送、疑うべきは?」 日経メディカル カンファで学ぶ臨床推論  https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/doctors/info/mag/nm/pitfall/201910/562745.html