菊池病
  • 典型的には、数週間の頚部リンパ節腫脹と発熱があり、白血球数が低下し、LDHが上昇していれば本疾患を疑う。しかしながら、実際の病像は多彩である
  • アジア人、特に日本人、韓国人、台湾人の多く、白人では非常に稀
  • 若い女性に多いとされているが、男女比はほぼ1:1とする報告もある(*1)
  • 臨床経過や血液検査所見、画像所見のみで診断することは困難であり、確定診断には生検を必要とする
  • 悪性リンパ腫や結核性リンパ節炎との鑑別が問題となることがある
  • 無菌性髄膜炎やSLE1、Still病、混合性結合性組織病、シェーグレン症候群、血球貪食症候群などが合併することがある
  • 3〜8%で再発の可能性があり、患者へ説明する必要がある

【臨床症状・検査所見】

  • 発熱、リンパ節腫脹、白血球減少、LDH上昇などが特徴的。発熱、皮疹、体重減少などがみられることもある
  • 発熱は71%(うち38℃以上は49%)、リンパ節腫脹は頸部のみが90%で全身性が3%。4000/μL以下の白血球減少は50%(*1)
  • 発熱は持続性の稽留熱、リンパ節には圧痛がある
  • フェリチン、IL2レセプターは特異度が低いが、高値の場合はStill病や悪性リンパ腫を考慮する

【診断】

  • 臨床経過および血液検査、画像検査で疑いが強ければリンパ節生検を行って診断を確定する
  • 特にステロイド治療を行う場合は、悪性リンパ腫など他疾患との鑑別が困難になる場合があり、生検による確定診断が必要とされている
  • 若年女性でリンパ節生検がはばかられる場合には穿刺吸引細胞診を行う場合も多い
    (病理組織所見の特徴) 病変部が一般に傍皮質部にみられ、大型化・芽球化したリンパ球ならびに組織球で占められ、壊死に乏しい。リンパ球や組織球に混在して各崩壊産物がみられることが多く、一部は組織球に貪食されている。また組織球の一部には赤血球貪食もみられる(*4)

【治療】

  • 約3割で自然軽快するが、6割の症例にはNSAIDS投与が必要となり、約3割はステロイド投与を必要とする(*1)
  • ステロイドは1〜2mg/kg/日から開始して、2週間以上持続したのちに減量する。減量中に再燃することがあるので血液検査やリンパ節所見を観察しつつ丁寧に減量する
参考文献)
  1. 中村造 他「菊池病69例の臨床的検討」感染症誌 83:363~368,2009
  2. 吉福孝介 他「菊池病の2例」 耳鼻 62:218∼224,2016
  3. 稲毛康司「組織球性壊死性リンパ節炎」ドクターサロン65巻11月号(10. 2021)
  4. 菊池昌弘:菊池病.日内学誌 2002;91:2057―8