IgA血管炎

IgA血管炎

【概念と疫学】

  • ヘノッホ・シェーライン紫斑病(HSP)から名称変更された
  • 小型血管炎に分類される
  • 約半数の症例で先行感染があり、その他ワクチン接種、虫刺症なども誘因となりうる
  • 3〜10歳に最も多い
  • 小児では10万人に約20人で発症する
  • 成人での頻度は小児の1/5〜1/10だが再発率が高く、腎障害が重症になりやすい
  • 糸球体腎炎合併は、小児で20〜50%、成人で50〜80%

【病理所見】

  • 小血管周囲の炎症細胞浸潤と血管壁のIgA沈着が特徴
  • 皮膚では真皮の出血を伴う白血球破砕性壊死性章血管炎
  • 腎臓では蛍光抗体法でメサンギウム領域を中心にIgA,C3の沈着を認める

【症状】

(皮膚症状:100%)

  • 触診できる軽度盛り上がった紫斑(palpable purpura)がほぼ100%で出現する。ほとんどの場合下肢に多発
  • 高齢者の場合は真皮線維の脆弱化により盛り上がりが目立たないので注意
  • 約70%で初発症状となる
  • 丘疹、紅斑、水疱、膨疹などを合併する場合もある
  • 血小板減少や血液凝固異常を伴わない

(関節痛・関節炎:60〜75%)

  • 膝関節、足関節に多い
  • 約1/3では手関節、肘関節にもみられる

(消化器症状:50〜65%)

  • 腹痛、嘔気、嘔吐、下痢、血便、血性下痢など
  • 通常は紫斑と同時期に生じる
  • 紫斑の前に出現することが稀ではなく急性腹症と間違われやすい

(腎炎:20〜55%)

  • 皮膚症状の約1ヶ月後に蛋白尿や血尿で気づかれることが多い
  • 紫斑病性腎炎とも呼ばれる
  • 5%が血尿のみで、38%が血尿+蛋白尿、15%が急性腎炎症候群、23%が腎炎+ネフローゼ症候群、8%がネフローゼ症候群で発症
  • 成人では85%が腎炎をきたす
  • IgA腎症は腎外症状を認めない

【検査所見】

  • 病初期には血清IgAが上昇(約40〜60%)
  • Rumpel-Leede 試験は約30%で陽性
  • 血沈値の亢進やCRP高値を認めることが多い

【予後】

  • 基本的には予後良好
  • 小児では、腎炎を除く全ての症状は1ヶ月以内に寛解することが多い
  • 成人は腎炎を発症しやすく、かつ重症化傾向が強い
  • 成人IgA血管炎250例のコホート研究では、32%が4カ月以内に腎機能不全を呈し、平均14.8年で持続性の腎機能異常が32%に見出され、そのうち11%が末期の腎不全。27%が中等度ないし重症腎不全に至った(*4)

【治療】

  • 皮膚症状には抗ヒスタミン薬
  • 関節症状にはNDSAIDS
  • 高度の腹痛やネフローゼ症候群を伴う腎症に対してはステロイド投与を考慮する
参考文献)
  1. 皮膚血管炎・血管障害診療ガイドライン策定委員会「皮膚血管炎・血管障害診療ガイドライン 2023 ―IgA 血管炎、クリオグロブリン血症性血管炎、結節性多発動脈炎、リベド様血管症の治療の手引き 2023―」
  2. 林朋恵 「アレルギー性紫斑病(IgA 血管炎)」血栓止血誌 2018; 2(9 6): 651-653
  3. 「血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版)」
  4. 猿田享男 監修「1252専門家による私の治療 2021-2022年度版」日本医事新報社 2022. IgA血管炎 杉山英二
  5. Pillebout E, Thervet E, Hill G, et al: Henoch-Schönlein purpura in adults: outcome and prognostic factors, J Am Soc Nephrol, 2002; 13: 1271―1278.