皮膚筋炎/多発性筋炎

  • 自己免疫性で原因不明の、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下を来す慢性炎症性疾患
  • 典型的な皮疹を伴うものは、皮膚筋炎
  • 男女比1:3。発症のピークは5〜9歳と50歳代
  • 本邦では、毎年1000〜2000人が新規発症していると推定される

【症状】

全身症状) 

  • 発熱、全身倦怠感、易疲労感、食欲不振、体重減少

筋症状)

  • 緩徐に発症・侵攻する四肢近位筋、頸筋群、咽頭筋の筋力低下
  • 日常生活では階段昇降、しゃがみ立ち、重量物の持ち上げ、仰臥位での頭部挙上などが困難となる
  • 重症例では横隔膜や肋間筋などの呼吸筋の障害により呼吸困難となる
  • 嚥下に関わる筋力の低下は誤嚥や窒息の原因となる

皮膚症状)

    ヘリオトロープ疹 上眼瞼の浮腫性かつ紫紅色の紅斑


    ゴットロン丘疹 手指の指節間関節や中手指節関節の背側に紫色の丘疹ないし紅斑で落雪を伴う ゴットロン徴候 手指関節、肘、膝関節の伸側にもゴットロン丘疹と同様な紅斑が出現する

その他)

  • 30%強は大関節を中心として骨破壊を伴わない多発関節痛・関節炎を合併する
  • レイノー症状は30%に見られる

重大な合併症)

  • 間質性肺炎 約半数の症例でみられる
  • 不整脈、心不全
  • 悪性腫瘍の発生率は一般人口と比べてDMで約3倍、PMRでは2倍弱

【検査成績】

  • 血清筋原性酵素(CK アルドラーゼ LDH AST ALT)ミオグロビンの高値。筋障害の程度を反映する
  • 心筋病変がある場合はCK-MBや心筋トロポニンが高値となる
  • 抗核抗体 約8割で陽性
  • 抗Jo-1抗体 約2割で陽性

【厚生労働省 難病認定のための診断基準】

【皮膚症状】

    ヘリオトロープ疹:両側または片側の眼瞼部の紫紅色浮腫性紅斑
    ゴットロン丘疹:手指関節背面の丘疹 ゴットロン徴候:手指関節背面および四肢関節背面の紅斑

【皮膚以外の所見】

    上肢又は下肢の近位筋の筋力低下
    筋肉の自発痛又は把握痛 血清中筋原性酵素(クレアチンキナーゼ又はアルドラーゼ)の上昇
    筋炎を示す筋電図変化 骨破壊を伴わない関節炎又は関節痛
    全身性炎症所見(発熱、CRP上昇、又は赤沈亢進) 抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体(抗Jo-1抗体を含む。)陽性
    筋生検で筋炎の病理所見:筋線維の変性及び細胞浸潤

診断  

【診断】

◎ 皮膚症状のみで皮膚病理学的所見が皮膚筋炎に合致するものは、無筋症性皮膚筋炎として皮膚筋炎に含む

診断が確定すれば、必ず肺と心臓を評価する

  • 間質性肺炎) 胸部HRCT 呼吸機能検査 DLco
  • 心病変) 心筋トロポニンT、心電図、心エコー、心筋シンチグラム

【治療】

  • 副腎皮質ステロイドが第1選択
  • 副作用等でステロイドが十分に使えない場合は免疫抑制剤
  • 皮膚炎主体の場合は遮光と局所ステロイド治療
  • 悪性腫瘍の検索を十分に行うことが重要

【予後】

  • 急速進行性間質性肺炎や悪性腫瘍合併例では予後不良
  • 初発患者のうち約 10%は死の転機を迎える
  • 全症例の5年生存率は、約80%前後とされる
  • 悪性腫瘍の検索を十分に行うことが重要
参考文献)
  1. 難病情報センター「皮膚筋炎/多発性筋炎(指定難病50)」
    https://www.nanbyou.or.jp/entry/4079
  2. 上阪等「発性筋炎・皮膚筋炎の病態・診断・治療」日本内科学会雑誌 105巻 9号 2016
  3. 四十坊典晴 他「わが国におけるサルコイドーシスの診断基準と重症度分類」日サ会誌 2015; 35: 3-8
  4. 藤本公則「サルコイドーシスの胸部画像診」日サ会誌 2013; 33: 31-34
  5. 猿田享男 監修「1252専門家による私の治療 2021-2022年度版 サルコイドーシス 稲瀨直彦」日本医事新報社 2022