サルコイドーシス

サルコイドーシス

  • 原因不明の多臓器疾患であり、若年者から発症する
  • 肺門縦隔リンパ節、肺、眼、皮膚の罹患頻度が高いが、神経、筋、心臓、腎臓、骨、消化器などの臓器も罹患する
  • 特に治療上注意すべき臓器は眼、肺、心臓、神経、腎臓などでありQOLや予後に関係する臓器の障害は十分な管理が必要
  • 2012年の統計では本邦では23088人が登録

【疾患概念(1991年第12回国際サルコイドーシス会議)】

  1. サルコイドーシスは原因不明の多臓器疾患であり、その病理組織は非乾酪性類上皮細胞肉芽腫
  2. 免疫学的には皮膚の遅延型過敏反応が抑制されている
  3. 診断には臨床およびX線所見に加えて罹患部位に類上皮細胞肉芽腫が存在すれば診断が確実になる
  4. 病変部位におけるCD4陽性T細胞/CD8陽性T細胞比の増加(Th-1型反応)が見られる
  5. その他の所見としては血清ACE活性上昇、ガリウムの取り込みの増加、Ca(カルシウム)代謝の異常、気管支粘膜の蛍光血管造影所見の異常がある
  6. 多くは自然治癒するが潜行性発病例、特に多臓器に肺外病変のある例は慢性に進行し、線維化に進展することもある
  7. 副腎皮質ホルモンの治療は症状を改善させ、肉芽腫形成を抑制し、血清ACE値とガリウムの取り込みは正常化する

【症状】

  • 霧視・羞明・飛蚊・視力低下などの眼症状で発見される場合が最も多く、次いで皮疹、咳、全身倦怠感など
  • 自覚症状がある場合は60-70%
  • その他、発熱、結節性紅斑、関節痛、全身痛など

【診断 : サルコイドーシス学会診断基準】

【胸郭内病変】

    胸部X線・CT所見(両側性肺門縦隔リンパ節腫脹、リンパ路に沿った肺野陰影、血管・胸膜の変化など)
    肺機能所見(%VC・DLco・PaO2 の低下) 気管支鏡所見(粘膜下血管のnetwork formation、結節など)
    気管支肺胞洗浄液所見(リンパ球の増加、CD4/8 上昇) 心電図所見(房室ブロック、心室性不整脈、右脚ブロック、軸偏位、異常Q波など)
    心エコー所見(心室中隔の菲薄化、局所的な左室壁運動異常または形態異常) ガドリニウム造影MRI所見(心筋の遅延造影所見)

【胸郭外病変】

    眼病変(肉芽腫性前部ぶどう膜炎、隅角結節、網膜血管周囲炎、塊状硝子体混濁など)
    皮膚病変(結節型、局面型、びまん浸潤型、皮下型、瘢痕浸潤、結節性紅斑) 表在リンパ節病変(無痛性腫脹)
    唾液腺病変(両側性耳下腺腫脹、角結膜乾燥、涙腺病変など) 神経系病変(脳神経、中枢神経障害など)
    肝病変(肝機能異常、腹腔鏡上の肝表面の小結節など) 骨病変(手足短骨の骨梁脱落、嚢胞形成など)
    脾病変(脾機能亢進に伴う汎血球減少、脾腫、巨脾など) 筋病変(腫瘤、筋力低下、萎縮など)
    腎病変(腎機能異常、持続性蛋白尿、高カルシウム血症、結石など) 胃病変(胃壁肥厚、ポリープなど)

【検査所見】

    両側性肺門リンパ節腫脹
    血清ACE上昇または血清リゾチーム上昇
    血清可溶性インターロイキン2受容体上昇
    67Ga-citrate シンチグラム集積像陽性(リンパ節、肺など)またはFDG/PET集積像陽性(心など)
    気管支肺胞洗浄液のリンパ球増加、CD4/8上昇

【病理組織所見】

    類上皮細胞からなる乾酪性壊死を伴わない肉芽腫病変
    生検部位(リンパ節、経気管支肺生検、気管支壁、皮膚、肝、筋肉、心筋、結膜など)

診断  

【診断】

  • 眼病変、心臓病変、皮膚病変、神経・筋病変などについては別に診断の手引きが用意されている

プライマリケアでサルコイドーシスを疑う基準(私案)

◎ 上記のようにサルコイドーシス学会診断基準は、専門的な知識や評価が必要とされ、プライマリケアの場では疑いから診断に結びつけることほぼ不可能。そこで、プライマリケアで本疾患を疑い、専門家への紹介へと結びつけるための基準を作成した。これは完全に筆者の私案であり、当然、客観的な検証はされていない

    両側性肺門縦隔リンパ節腫脹(BHL)などの胸部X線、CT/HRCT所見* 肺機能所見(%VC・DLco・PaO2 の低下)
    心電図所見(房室ブロック、心室性不整脈、右脚ブロック、軸偏位、異常Q波など)あるいは心エコー所見(心室中隔の菲薄化、局所的な左室壁運動異常または形態異常)
    血清ACE上昇または血清リゾチーム上昇 血清可溶性インターロイキン2受容体上昇 血清もしくは尿Ca高値
    眼病変(肉芽腫性前部ぶどう膜炎、隅角結節、網膜血管周囲炎、塊状硝子体混濁など)
    皮膚病変(結節型、局面型、びまん浸潤型、皮下型、瘢痕浸潤、結節性紅斑) 表在リンパ節病変(無痛性腫脹)
    胃病変(胃壁肥厚、ポリープなど)
     * 胸部画像所見
       ①上肺野優位でびまん性の分布をとる肺野陰影、粒状影、斑状影
       ②気管支血管束周囲不規則陰影と肥厚 
       ③上肺野を中心に肺野の収縮を伴う線維化病変

診断  

【治療】

  • 根治療法はない
  • 多くの症例では無治療で経過観察
  • 臓器障害によってQOLが障害される例や、生命予後のリスクが高い例では、ステロイドホルモンやMTXなどの免疫抑制剤が用いられる
参考文献)
  1. 難病情報センター「サルコイドーシス(指定難病84)」
    https://www.nanbyou.or.jp/entry/110
  2. 吉田俊治「サルコイドーシス」日内会誌 99:2490~2496,2010
  3. 四十坊典晴 他「わが国におけるサルコイドーシスの診断基準と重症度分類」日サ会誌 2015; 35: 3-8
  4. 藤本公則「サルコイドーシスの胸部画像診」日サ会誌 2013; 33: 31-34
  5. 猿田享男 監修「1252専門家による私の治療 2021-2022年度版 サルコイドーシス 稲瀨直彦」日本医事新報社 2022