結節性多発動脈炎

【概念と疫学】

  • 血管炎症候群の中でも稀な疾患
  • 病理組織学的には、急性期には筋性動脈の血管壁に強い炎症と壊死が認められ、病変部位が分節的に存在する。壊死部の血管にはフィブリノイド壊死、内・外弾性板断裂が認められ、しばしば動脈瘤が形成される
  • 平均発症年齢は55歳で、男女比は1:1〜2でやや女性が多い
  • 病院は不明。欧米ではB型肝炎ウイルス感染に続発する二次的PANが多く見られるが本邦ではまれ

【症状】

  • 全身症状としては、全身症状と虚血による局所症状
  • 高血圧は糸球体虚血に伴うレニン・アンギオテンシン系の活性化により発症し、早急に対応が必要な高血圧緊急症を呈する

症状の頻度については 文献1と文献3の間でかなり大きな差がある

【検査所見】

  • 特異的な検査はない
  • ANCA陰性を確認する

【診断】

はじめからPANを診断するのではなく、まず頻度の高い血管炎以外の疾患を除外したのち血管炎としての評価をはじめる

  1. 感染、悪性腫瘍、薬剤性の除外
    • 感染の中で特に感染性心内膜炎が鑑別場重要で有、血液培養および心エコーを行い、歯科治療の既往は必ず確認する
    • 悪性腫瘍の鑑別には頭部、胸部腹部CTなど全身的な画像診断が必須であり、さらに必要に応じて上部下部消化管内視鏡、腰椎穿刺などを行う

【治療】

  • 軽症ではPSL単独、改善しなければ免疫抑制剤を併用

【予後】

  • 治療開始が遅延すると合併症で死亡率が高くなる
  • 5年生存率は75〜93%
参考文献)
  1. 合同研究班「【ダイジェスト版】血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改定版)」https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_isobe_h.pdf
  2. 猿田享男 監修「1252専門家による私の治療 2021-2022年度版」日本医事新報社 2022: 結節性多発動脈炎 藤井隆夫
  3. 難病情報センター「結節性多発動脈炎(指定難病42)」https://www.nanbyou.or.jp/entry/244