巨細胞性動脈炎
  • 高安動脈炎とともに大型血管炎に分類される
  • 主に大動脈の分枝、特に眼動脈や外頸動脈の分枝に好発
  • 病理学的には血管壁に多角の巨細胞を伴う単核球主体の細胞浸潤と肉芽腫が特徴
  • 従来は側頭動脈炎と呼ばれていたが、他の大動脈分枝にも病変がみられるので現在では巨細胞性動脈炎と呼ばれている
  • 1年間の受療者数は0.65人/10万人と稀
  • 欧米では10〜20人/10万人程度
  • 50歳以上に好発し、発症年齢の平均は71.5歳(*4)
  • 約30%にリウマチ性多発筋痛症を合併する
(典型的病像)
◎ 70〜75歳を中心とする高齢者が、急性ないし亜急性に発熱などの全身症状を伴って側頭部痛を訴える。炎症反応は高度上昇。

【症状】

large-vessel GCA:LV-GCA 大動脈やその第一分枝に病変を伴うもの
cranial GCA:C-GCA : 大動脈やその第一分枝に病変を伴わないもの

【症状と検査所見】

  • 約40%では急性、残りは亜急性に発症する
  • 半数では全身症状(発熱、体重減少、全身倦怠感等)を伴う
  • 側頭動脈の怒張と頭痛の頻度が最も高い
  • 眼動脈が侵されると、視力低下、視野異常、霧視、失明などをおこす
  • 黒内障は一過性の視力喪失だが原因は頸動脈狭窄とされる
  • 炎症反応は通常高度上昇するが特異的なマーカーはない

顎跛行  食事や会話で顎が疲れやすい

【診断】

  • 特異度に優れた所見や検査が存在せず、明確な診断基準(上記は分類基準)がないため、非典型例では診断は簡単ではない
  • 診断治療が遅れると、視力障害、失明、脳梗塞、大動脈瘤の形成や解離など重大な合併症のリスクが高まるので、早期診断と迅速な治療が望まれる
  • 側頭動脈生検は確定診断に重要だが、経験豊かな専門施設でも感度85%、特異度94%程度だと報告されている
  • LV-GCAでは生検することが困難

(側頭動脈エコー)

  • GCAが疑われる80人の患者を複数の専門医が側頭動脈生検含む評価にてGCAと非GCAに分類し、側頭動脈エコーで動脈内腔に低エコーのhaloの存在、あるいはCompression test陽性所見の診断における感度特異度を評価した報告では、感度は79%、特異度は100%であったとされている(*5)


【評価】

  • 診断早期でも全身の大動脈に多数の病変を認めることが多いと報告されている(*2)


【治療】

  1. 寛解導入療法 ステロイド大量投与
  2. GCAは高齢者に多く、高齢者では高血圧、糖尿病などの合併症があることが多く、また骨粗鬆症、皮膚脆弱性、感染症などの合併頻度が高い。これらの適切なコントロールが大きな課題となる
  3. メトトレキサート、TNF-α阻害薬(アダリムマブ)やトシリズマブなどによる治療の研究が進んでいる

★ ステロイドを用いる前には必ず肝炎ウイルスのチェックを行う

【予後】

  • 心血管イベントによる死亡率が高い
  • 大動脈瘤の頻度は一般人の2倍
  • 大動脈瘤などの大血管の構造的変化は診断から5年ほどで出現して、のち増大し続ける
参考文献)
  1. 山田秀裕 他「巨細胞性動脈炎」日内会誌 106:2136~2142,2017
  2. Prieto-González S, et al : Large vessel involvement in biopsy-proven giant cell arteritis : prospective study in 40 newly diagnosed patients using CT angiography. Ann Rheum Dis 71 : 1170―1176, 2012.
  3. 天野宏一「巨細胞動脈炎」日内会誌 104:2139~2142,2015
  4. Kobayashi S, et al : Clinical and epidemiologic analysis of giant cel(l temporal)arteritis from a nationwide survey in 1998 in Japan : the first government-supported nationwide survey. Arthritis Rheum 49 : 594―598, 2003.
  5. M. Aschwanden et.al. Temporal Artery Compression Sign – A Novel Ultrasound Finding for the Diagnosis of Giant Cell Arteritis Ultraschall Med 2013; 34(1): 47-50
  6. 上田剛士 「ジェネラリストのための内科診断リファレンス」医学書院 2014
  7. 猿田享男 監修「1252専門家による私の治療 2021-2022年度版 ー 巨細胞性動脈炎 中島亜矢子」日本医事新報社 2022.