リウマチ性多発筋痛症

リウマチ性多発筋痛症

  • 上腕二頭筋腱鞘、三角筋下滑液包、股関節大転子部滑液包、坐骨結節や恥骨結合、寛骨臼などの関節外炎症を特徴とする
  • 病名に「筋痛」とあるが、炎症は滑液包を中心とする
  • 男女比は1:2で、平均発症年齢は70〜75歳
  • 約20%に巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)を合併する
  • 以前は悪性腫瘍の合併の除外が重視されていたが、近年、コントロール群と比べて悪性腫瘍の頻度に有意差がなかったことが報告されている(*2)
(典型的病像)
◎ 70〜75歳を中心とする高齢者が、亜急性に頸部・上肢帯・下肢帯の疼痛を発症し、夜間寝返り時や起立時、歩行開始時などに増強する

【症状】

(3主徴)

  • 急性発症が特徴。2週間程度で症状は完成
  • 3分の1程度では発熱、全身倦怠感、体重減少、食欲不振等高サイトカイン血症による全身症状
  • 最大の特徴は上肢帯、下肢帯周辺の疼痛。疼痛ではなく「こわばり」と表現されることもある。この場合は「疼痛」の鑑別診断からはずれるので診断がつきにくくなる
  • 疼痛は安静から動作にうつるときが最も強い。夜間痛も特徴で、寝返り時に増強するので睡眠障害を伴うこともある

【理学的所見】

  • 肩の挙上制限
  • 上腕二頭筋腱鞘の圧痛 三角筋下滑液包の圧痛
  • 上腕二頭筋腱鞘は上肢を外旋させて、上腕骨骨頭の大結節と小結節の間にある結節間溝を触知して確認する
  • 三角筋下滑液包は、肩峰を触知して、そこから遠位に触診して確認する
  • 少なくとも早期には筋力低下や筋萎縮はない

【【診断】

★ 「50歳以上、両肩の疼痛、炎症反応の上昇」の3つは必須の基準となっている

  • 十分な特異度を持った診断基準は存在しない
  • 診断は疑うべき症状、所見を有する症例で、十分な鑑別診断ののちに行う
  • エコー所見の有無に関係なく、感度も特異度も明らかに不十分
  • エコー所見無い場合の陽性尤度比3.09、陰性尤度比0.41
  • エコー所見ある場合の陽性尤度比3.47、陰性尤度比0.42
  • 血沈がほぼ正常なリウマチ性多発筋痛症も存在しえる

【評価と鑑別診断】


  1. 上記の全てについて検討する必要はないが、スクリーニングとして最低限、以下の検査を行う
  2. 特に2セットの血液培養を怠ってはならない
  3. 原発性の炎症性筋疾患でみられるような血清筋原性酵素値の上昇はない
  4. 皮疹などの身体所見および血液学的異常などでSLEを疑えば抗核抗体などを調べる
  5. しばしば、RS3PE症候群との鑑別が問題となる

【治療】

  1. 少量(プレドニゾロン15〜20mg/日)が奏功する
    • 数日以内に著効すればPMRの可能性が高い。この程度の投与期間で著効する膠原病はほぼ存在しない
    • 自覚症状が改善しなくても、他覚的には関節可動域の拡大、活動性の増大、炎症反応の改善があれば、「無効」とは言えない
    • 減量で再燃することが多く、治療開始2年後でステロイド内服が必要な例は80%に達する
    • 数週間投与しても自覚症状、他覚的所見のいずれも改善していなければ診断を再検討する。専門医紹介も選択肢
    • 中止後の再発率は2年で50%
  2. メトトレキサート(MTX)メトトレキサート(MTX)
    • 再発を繰り返す場合にはMTXを検討する
    • 10mg/週程度で用いられる
    • 併用で寛解率は上がり、再発率は低下する
  3. ステロイド骨粗鬆症
    • 予防はほぼ必須
      ビタミンD+経口ビスホスホネート
参考文献)
  1. 杉原毅彦「リウマチ性多発筋痛症」日内会誌 106:2125~2130,2017
  2. Muller S, et al : Is cancer associated with polymyalgia rheumatica? A cohort study in the General Practice Research Database. Ann Rheum Dis 73 : 1769―1773, 2014.
  3. US Preventive Services Task Force. Screening for eating disorders in adolescents and adults: US Preventive Services Task Force recommendation statement. JAMA. 2022;327(11):1061–1067.
    中村正「リウマチ性多発筋痛症」臨床リウマチ, 31: 55〜63, 2019 6.上田剛士 「ジェネラリストのための内科診断リファレンス」医学書院 2014