混合結合組織病(MCTD)
  • 全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus:SLE)、全身性強皮症(systemic sclerosis,scleroderma:SSc)、多発性筋炎(polymyositis:PM)の 3 疾患が混合した臨床像を呈し、血清学的に抗U1-RNP抗体を高力価で発現する疾患
  • 2012年には患者数10146(頻度 6.1/10万人)
  • 1:13.4で圧倒的に女性が多い

【症状】

  • MCTDに共通する症候と、混合するSLE、強皮症、多発性筋炎に由来する症候に区分されている

(共通症候)

  • レイノー現象 寒冷暴露やストレスにより指趾先端に誘発され、しびれ、痛み、異常感覚として自覚される
  • 指ないしは手背の腫脹 ソーセージ様指とも呼ばれる。指先は先細りすることもある
  • 肺動脈性肺高血圧症 肺動脈楔入圧≦15mmHgで定義される。心エコーによる3ヶ月ごとの評価が推奨されている
    • 三尖弁逆流速度3/4m/s以上が診断項目とされている指針もある
  • 無菌性髄膜炎 17.1%に認められたとされている
  • 三叉神経障害 約10%に見られる。顔面の三叉神経第2枝または第3枝のしびれ感

◎ 混合症候については診断基準の混合所見の覧を参照◎ 混合症候については診断基準の混合所見の覧を参照

【検査と評価】

  • 右心カテーテル、心エコー: 肺高血圧、心嚢炎
  • 肺機能検査、肺CT(高解像度)、%DLco: 間質性肺疾患、胸膜炎、心嚢炎
  • 筋のMRI: 多発性筋炎
  • 脳MRI: 中枢神経病変の評価、鑑別
  • 上部消化管X腺造影検査、食道内圧検査: 食道病変の評価。上部消化管内視鏡のみだと評価は難しい

【診断】

混合結合組織病(MCTD)診断基準2004年改訂

Ⅰ.共通所見

    Raynaud現象 指ないし手背の腫脹 肺高血圧症

Ⅱ.免疫学的所見

    抗U1-RNP抗体
    陽性 陰性

Ⅲ.特徴的な臓器所見

    肺動脈性肺高血圧症 無菌性髄膜炎 三叉神経障害

Ⅳ.混合所見

    A 全身性エリトマトーデス様所見
    多発関節炎 リンパ節腫脹 顔面紅斑
    心膜炎または胸膜炎 白血球減少(4000/μL以下)または血小板減少(100000/μL以下)

    B 強皮症様所見
    手指に限局した皮膚硬化 肺線維症、肺拘束性換気障害または拡散能低下 食道蠕動低下または拡張

    C 多発性筋炎様所見
    筋力低下 筋原性酵素上昇 筋電図における菌原性異常所見

診断  

【診断】

  1. Iの1所見以上が陽性、IIの所見が陽性、IIIの1所見以上が陽性である場合混合性結合組織病と診断する
  2. IVの A、B、C項より2項目以上からそれぞれ1所見以上が陽性、Iの1所見以上が陽性、IIの所見が陽性の3つを満たす場合に混合性結合組織病と診断する

【治療】

  • 特異的な治療法はない
  • 肺高血圧) ・10-15%程度で肺高血圧を合併し、生命予後にかかわる。自覚症状のない段階から注意すべき。近年は肺高血圧症に対して多くの治療方法が確立されて生命予後がめざましく改善された
  • プロスタサイクリン製剤としてベラプロスト徐放薬、ホスホジエステラーゼ 5(phos-phodiesterase5:PDE5)阻害薬、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)の 3系統の経口薬剤を投与
  • 専門機関での免疫抑制療法

間質性肺炎)

  • 5%以下で間質性肺炎
  • シクロフォスファミドが第1選択
  • ステロイドや他の免疫抑制薬の推奨度は低い

無菌性髄膜炎)

  • NSAIDSは用いない
  • グルココルチコイドを用いることもある
  • びまん性中枢神経病変が合併すれば免疫抑制剤の使用を検討

三叉神経痛)

  • グルココルチコイドは用いない
  • カルバマゼピンなどの抗てんかん薬を用いる場合がある

SLE、強皮症。多発性筋炎様症状)

  • それぞれの疾患の治療法に準じて治療
  • 炎症が強い症例やSLEに伴う症状がみられれえばでは副腎皮質ステロイド
  • 皮膚硬化やレイノー現象にはステロイドの効果は乏しく血管拡張薬が用いられる
  • ステロイド抵抗性の腎障害や中枢神経障害、間質性肺炎にはシクロフォスファミドやアザチオプリンが用いららる
  • 関節破壊を伴う多発関節炎を呈する場合はMTXなどの抗リウマチ薬
参考文献)
  1. 難病情報センター「混合結合組織病(指定難病52)」
    https://www.nanbyou.or.jp/entry/264
  2. 103:2501~2506,2014
  3. 松下拓也 他「混合性結合組織病の神経・筋障害」日内会誌 99:1790~1794,2010
  4. 猿田享男 監修「1252専門家による私の治療 2021-2022年度版 混合結合組織病 三森経世 他」日本医事新報社 2022