好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

【概念と疫学】

  • ① 気管支喘息、②末梢血の好酸球増加、③組織学的に中・小血管(おもに細動脈)の血管周囲への好酸球浸潤と、壊死性および壊死性肉芽腫性血管炎または血管外肉芽腫の存在、の3 つの特徴により結節性多発動脈炎(従来の結節性動脈周囲炎)から分離された疾患
    • (病理所見) 中小血管の周囲の好酸球を主体とした細胞浸潤とフィブリノイド壊死、血管外肉
  • 推定受療者数約1900人
  • 発症年齢は平均約55歳、1:1.7で女性に多い

【症状】

  1. 気管支喘息が先行し、再燃を繰り返す
  2. 気管支喘息の発症から3年以内にし好酸球増多を伴って血管炎を発症することが多い
  3. 血管炎の症状は、発熱などの全身症状、脳血管障害、虚血性心疾患、心外膜炎、好酸球性肺炎、多発性単神経炎、消化管潰瘍、虚血性大腸炎、筋痛、関節痛、紫斑、皮膚血管炎など
  4. 多発性単神経炎は90%以上の症例で見られる

【検査所見】

  • ANCA: 日本人ではMPO-ANCA陽性率は40〜50%程度、PR3-ANCAはまれ
  • 炎症反応: CRP上昇、γグロブリン増加、血沈亢進、血算での白血球数・血小板数増加
  • アレルギー:好酸球数増多、IgE高値、リウマトイド因子陽性
胸部X線
  • 非区域性の分布を示す両側性浸潤影を示す例が多い
  • しばしばすりガラス様陰影

【診断】

はじめからGPAを診断するのではなく、まず頻度の高い血管炎以外の疾患を除外したのち血管炎としての評価をはじめる

  1. 感染、悪性腫瘍、他の膠原病による血管炎、薬剤性の除外
    • 感染の中で特に感染性心内膜炎が鑑別場重要で有、血液培養および心エコーを行い、歯科治療の既往は必ず確認する
    • 悪性腫瘍の鑑別には頭部、胸部腹部CTなど全身的な画像診断が必須であり、さらに必要に応じて上部下部消化管内視鏡、腰椎穿刺などを行う
  2. 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)を想定して評価する
    • 気管支喘息および好酸球増多*がなければ除外できる
  3. 多発血管炎性肉芽腫症(GPA)を除外する

【治療】

  • 基本はステロイド療法と免疫抑制剤

【予後】

  • ステロイドと免疫抑制剤の併用で6ヶ月以内に90%以上が寛解
  • 5年生存率は97%
  • 多発性単神経炎による知覚障害は遷延しやすく、60%以上で不可逆的な障害を残す
参考文献)
  1. 合同研究班「【ダイジェスト版】血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改定版)」https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_isobe_h.pdf
  2. 猿田享男 監修「1252専門家による私の治療 2021-2022年度版」日本医事新報社 2022: 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(GPA) 神田浩子
  3. 有村義宏「ANCA 関連血管炎診療の進歩 ‒Overview‒」日サ会誌 2019, 39(1) 19-24
  4. 有村義宏「血管炎の最近の話題 ―ANCA関連血管炎を中心に―」日内会誌 107:115~123,2018
  5. 難病情報センター「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(指定難病44)」https://www.nanbyou.or.jp/entry/3878
  6. Sada KE, Yamamura M, Harigai M, et al. Different responses to treatment across classified diseases and severities in Japanese patients with microscopic polyangiitis and granulomatosis with polyangiitis: a nationwide prospective inception cohort study. Arthritis Res Ther 2015; 17: 305.合同研究班「【ダイジェスト版】血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改定版)」https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_isobe_h.pdf