RS3PE症候群
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病因は不明
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本邦での発症頻度は50歳以上の0.09%と報告されており、リウマチ性多発筋痛症の1/3程度である
★ 悪性腫瘍の合併が非常に多いので、その検索を十分に行わなくてはならない
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(典型的病像)
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◎ 50歳以上で1〜2日の急性の経過で病態が完成する手足の浮腫と多発関節痛。
【症状】
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比較的急性の関節痛と末梢性の圧痕性浮腫
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四肢末梢の対称性圧痕性浮腫(指趾の屈筋腱や伸筋腱の腱鞘滑膜炎によると考えられている)
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症状は1〜2日で完成
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関節痛は対称性で、手指のMCP関節、PIP関節、手関節、足関節、膝関節に多い
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全身倦怠感、微熱、食欲不振、体重減少等の全身症状を伴うことが多い
【検査所見】
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CRPや血沈の高度上(>100mm/時もある)昇がみられることが多い
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PFやCCP抗体は原則陰性だが、陽性であっても除外できるわけではない
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MMP-3抗体は著増することが多い。治療が奏功すれば鋭敏に低下するのでマーカーになりうる
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関節のレントゲンではびらん等の骨破壊像がみられない
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MRIや関節エコーで腱鞘滑膜炎がみられる
【診断】

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明確な診断基準や分類基準がないので、本症の特徴をみたし、他の疾患が除外できた場合に診断する
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上記の基準は診断基準でも分類基準でもなく検証もされていない。あくまでも診断の参考ととらえるべき
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リウマチ性多発筋痛症や巨細胞性動脈炎、他の膠原病などの一部分症であるとする考え方もある ・鑑別診断としてはリウマチ性多発筋痛症や高齢発症関節リウマチが重要 ・悪性腫瘍の合併率は31〜54%と非常に高い。なかでも多いのは胃癌、大腸癌、前立腺癌などの腺癌と悪性リンパ腫であり、肺癌、卵巣癌、膀胱癌、白血病などの報告もある(*3)
【鑑別診断】
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PMRとEORAとの鑑別が重要である
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EORAとの鑑別で重要なのは圧痕性浮腫と発症の経過と骨X腺上のびらんの有無
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糖尿病治療薬のDPP-4阻害薬によって類似した症状がみられることある
【治療】
プレドニゾロン10〜15mg/日で治療を開始する
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ステロイドに対する反応は非常に良好であり、1〜2週間で寛解する。しない場合には診断を再検討する
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寛解すれば丁寧に経過観察しながら2〜4週間ごとに2.5mgずつ10mgまで減量し、その後は1〜2ヶ月ごとに1mgずつ減量する
③ メトトレキサート、TNF-α阻害薬(アダリムマブ)やトシリズマブなどによる治療の研究が進んでいる
★ ステロイドを用いる前には必ず肝炎ウイルスのチェックを行う
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参考文献)
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藤尾圭志「RS3PE症候群」日内会誌 106:2131~2135,2017
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折口智樹 他「RS3PE症候群」Clin Rheumatol Rel Res, 31: 48〜54, 2019
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Yao Q, et al : Is remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema(RS3PE)a subset of rheumatoid arthritis? Semin Arthritis Rheum 40 : 89―94, 2010.
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髙岸勝繁 他「ホスピタリストのための内科診療フローチャート第2版」シーニュ 2019
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猿田享男 監修「1252専門家による私の治療 2021-2022年度版 ー 巨細胞性動脈炎 南木敏宏」日本医事新報社 2022.