- 血清Na濃度が低下しているにもかかわらず、バソプレシンの分泌が十分に抑制されないために抗利尿作用が持続している状態
疾患
内分泌 (9)
1.
糖尿病性昏睡
┗ euDKA(正常血糖ケトアシドーシス)
2.
糖尿病性神経障害
3.
甲状腺機能異常
┗ 甲状腺中毒症
┗ 甲状腺中毒症の評価
┗ Basedow病
┗ 亜急性甲状腺炎
┗ 甲状腺クリーゼ
┗ 無痛性甲状腺炎
┗ 中枢性甲状腺機能亢進症(下垂体性TSH分泌亢進症)
┗ 甲状腺中毒性周期性四肢麻痺
┗ 甲状腺機能低下症
┗ 潜在性甲状腺機能亢進症
┗ 潜在性甲状腺機能低下症
┗ 中枢性甲状腺機能低下症
┗ NTI(Non Thyroidal Illness)
┗ マクロTSH血症
┗ 甲状腺腫瘍に対する穿刺吸引細胞診の適応
13.
原発性アルドステロン症
┗ レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系
14.
SIADH
15.
尿崩症
16.
急性副腎不全
17.
クッシング病・クッシング症候群
18.
褐色細胞腫・パラガングリオーマ
SIADH
【SIADHの病態】
- バソプレシンは尿量を抑制し、抗利尿ホルモン(Antidiuretic Hormone, ADH)とも呼ばれる
- バソプレシン分泌が少なくなると尿量が増加し、増加すると尿量が減少する
- 血漿浸透圧が低下すると、通常はバソプレシン分泌が抑制されて、水利尿が増加する
- SIADHでは、血漿浸透圧が低くてもバソプレシン分泌が抑制されず、水利尿が増加しないため、低浸透圧血症と低Na血症をきたす
【SIADHの診断】
- SIADHの診断は、低Na血症を手掛かりとして、その鑑別診断の中で他の疾患を除外して診断される
- 下の書類を参照
- AVPは測定感度以上であれば抑制されていないとする(*5)
【原因】
- SIADHを診断したら、必ず原因を検索する。原則として脳の画像検査は必須
- 原因は非常に多岐に渉る
中枢神経系疾患 髄膜炎、脳炎、頭部外傷、くも膜下出血、脳梗塞・脳出血、脳腫瘍、ギランバレー症候群
肺疾患 肺腫瘍、肺炎、肺結核、気管支喘息、陽圧呼吸
薬剤
抗うつ薬) 三環系抗うつ薬、SSRI、MAO阻害薬
抗精神病薬)フェノチアジン系(コントミン、ウインタミン、ピーゼットシー、ノバミン)
ブチロフェノン系(セレネース、ハロペリドール)
抗てんかん薬)カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム
抗悪性腫瘍薬) ビンクリスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、メトトレキサート
麻薬) モルヒネ
糖尿病) スルフォニルウレア系
利尿薬)サイアザイド系、ループ利尿薬
その他) NSAIDS、ACE阻害薬、PPI、アミオダロン、テオフィリン
- ◎ 運動関連低Na血症: マラソン等長時間の持久運動中及びその後はAVP分泌が亢進し、この状態で水分を過剰摂取すると、低Na血症を発症することがある
- ◎ 疼痛や悪心、嘔吐などのストレスがADHの不適切な分泌を引き起こすことがあり、低Na血症を来しうる
【治療】
- 原疾患の治療
- 1日の総水分摂取量を15〜20ml/kgに制限する
-
食塩を経口的に投与する(食塩9g 分3など)
- 血清Na濃度<120mEq/lで中枢神経症状を伴うなど速やかな治療を必要とする場合は、3%食塩水を点滴で投与する(下の資料を参照)
- 参考文献)
- 一般社団法人 日本内分泌学会 「間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き (平成30年度改訂)」
- 岩間信太郎 他「低ナトリウム血症と内分泌疾患」日内会誌 109:705~711,2020
- 富永直人 他「水電解質異常をきたす薬剤性腎障害」日腎会誌 2012;54(7):991-998
- 杉本俊郎 「抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)のメカニズムは?」Web医事新報 登録日: 2022-06-23
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=19853- 厚生労働省 「AVP分泌異常症」