- 慢性的なグルココルチコイドコルチゾールの過剰により特徴的な身体徴候とともに糖、脂質、骨代謝の異常、高血圧等を生じる全身疾患
- 副腎腺腫からのコルチゾール過剰分泌を狭義のクッシング症候群と呼び、下垂体からのACTH(副腎皮質刺激ホルモン)過剰が原因となる病態をクッシング病とする
- 悪性腫瘍などに伴う異所性ACTH分泌でも同様の病態が生じる
疾患
内分泌 (9)
1.
糖尿病性昏睡
┗ euDKA(正常血糖ケトアシドーシス)
2.
糖尿病性神経障害
3.
甲状腺機能異常
┗ 甲状腺中毒症
┗ 甲状腺中毒症の評価
┗ Basedow病
┗ 亜急性甲状腺炎
┗ 甲状腺クリーゼ
┗ 無痛性甲状腺炎
┗ 中枢性甲状腺機能亢進症(下垂体性TSH分泌亢進症)
┗ 甲状腺中毒性周期性四肢麻痺
┗ 甲状腺機能低下症
┗ 潜在性甲状腺機能亢進症
┗ 潜在性甲状腺機能低下症
┗ 中枢性甲状腺機能低下症
┗ NTI(Non Thyroidal Illness)
┗ マクロTSH血症
┗ 甲状腺腫瘍に対する穿刺吸引細胞診の適応
13.
原発性アルドステロン症
┗ レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系
14.
SIADH
15.
尿崩症
16.
急性副腎不全
17.
クッシング病・クッシング症候群
18.
褐色細胞腫・パラガングリオーマ
クッシング病・クッシング症候群
【症状】
- 満月様顔貌
- 中心性肥満または水牛様脂肪沈着
- 皮膚菲薄化、腹部赤色皮膚線条
- 近位筋の筋力低下
- 挫創、多毛、浮腫
- 小児における肥満を伴った成長遅延
- 高血圧、耐糖能異常,骨粗鬆症
- 月経異常、うつ症状
【検査所見】
- 末梢血リンパ球、好酸球減少
- 低K血漿、高血糖、LDL-C・中性脂肪の上昇、HDL-Cの低下
【診断】
- 低ナトリウム血症,高カリウム血症,低血糖,貧血,好酸球増多などを認める
【評価と治療】
- まず、医原性のCushing症候群を除外する
- ACTH自律分泌の有無を確認する
【確定診断】
(ACTH非依存性クッシング症候群疑いの場合)
- オーバーナイト1mgデキサメタゾン抑制試験で、翌朝のコルチゾールが抑制不十分(5mg/dL以上)
- 日内変動 深夜血中コルチゾール≧7.5μg/dL
◎ これらを満たせばACTH非依存性クッシング症候群と診断される。あとは画像診断にて副腎腺腫、副腎癌、副腎皮質過形成を鑑別する
(ACTH依存性クッシング症候群疑いの場合)
-
オーバーナイト0.5mgデキサメタゾン抑制試験で、翌朝のコルチゾールが抑制不十分(5mg/dL以上)
◎ 専門施設以外ではこれ以降は専門機関に紹介すべき -
次の4つの検査で評価を進める
- DDAVP(酢酸デスモプレシン)試験: DDAVP4μgを静注後の血中ACTHが前値の1.5倍以上(保険適応なし)
- コルチゾールの日内変動消失(夜間血中コルチゾールが5mg/dL以上)
- 複数日において深夜唾液中コルチゾール値が、その施設における平均値の1.5倍以上を示す
-
確定診断
- CRH試験
- 一晩大量デキサメタゾン抑制試験(翌朝の血清コルチゾール値が5μg/dL以上であれば陽性とする)
- 画像検査 MRIにより下垂体腫瘍を証明
-
選択的静脈洞血サンプリング
- DSTは感度85%特異度95%
【治療】
- クッシング病では下垂体腺腫、副腎性クッシング症候群では副腎腫瘍の摘出が原則
- クッシング病では放射線照射やガンマナイフなども行われている
- ともに薬物療法の選択肢がある(*2)
副腎性サブクリニカルクッシング症候群
- 副腎腺腫があるが、クッシング症候群の特徴的な身体徴候を欠き、早朝の血中コルチゾールが正常範囲であることが必須条件
- 軽微なコルチゾールの自律性分泌を認める
- 肥満、糖尿病ならびに高血圧等の生活習慣病が高頻度で、骨量低下や骨質低下も認められる
- 心筋梗塞の有病率が増加することが知られている
- 1mgDST試験の結果が1.8μg/dL以上であれば可能性がある
- 参考文献)
- 一色政志「クッシング症候群[私の治療」 Web医事新報 2021年7月3日 P.38
http://www.j-endo.jp/uploads/files/news/20210823.pdf- 大月道夫「Cushing症候群・副腎性 subclinical Cushing症候群の 診断と治療」日内会誌 107:674〜680,2018
- 柳瀬敏彦「副腎性サブクリニカルクッシング症候群新診断基準」日内会誌 108:2148~2153,2019