亜急性甲状腺炎
  • 甲状腺に炎症が生じ、自発痛および圧痛を認め、甲状腺組織の破壊により甲状腺中毒症を呈する疾患
  • 多くは上気道感染の前駆症状を認める
  • 原因については、ムンプスや麻疹のあどのウイルス感染の関与、HLA−Bw35が疾患感受性と関連という報告などがあるが詳細は不明である

【症状】

  • 95%の症例で甲状腺部の自発痛や圧痛があり硬い。頭痛部位は左右に移動する特徴を示し(クリーピング現象)、しばしば下顎や耳に放散する
  • 典型例では38〜39℃の発熱を認める
  • 初期には甲状腺中毒症(倦怠感、動悸、息切れ、発汗過多、手指鍼線、体重減少など)を呈する。その後、一過性に甲状腺機能低下症が見られる場合がある

【検査所見】

  • CRP上昇、血沈の亢進
  • 白血球は正常〜軽度高値
  • FT3高値、FT4高値、TSH低値、サイログロブリン高値
  • 甲状腺超音波検査では頭痛部位に一致して境界不明瞭な低エコー域が観察される

【診断】

  • 甲状腺の疼痛が乏しい場合は、Basedow病との鑑別が問題になる。その場合は放射性ヨード接種率(RAIU)を行う

【治療】

  • 無治療のまま放置しても、数ヶ月で自然寛解する
  • 軽症例ではNSAIDSを用いる
  • 中等度以上の症例では副腎皮質ホルモンを用いる 開始量:PSL30mg/日 1〜2週間ごとに5〜10mg/日ずつ減量し、2〜3ヶ月後に中止する 通常、投与後2日以内に発熱と疼痛は消失する 減量を急ぐと再燃しやすい。再燃した場合はふたたび20〜30mg/日にもどす
  • 頻脈が問題となれば β遮断薬 ビソプロロール(メインテートR)5mg またはアテノロール(テノーミンR)50mg1回1錠 1日1回服用。経口摂取が困難な場合はプロプラノロール(インデラルR注)やランジオロール(オノアクトR注)を考慮
  • 34%は6〜13ヶ月以内に、さらに15%が1年以後に甲状腺機能低下症を発症するため甲状腺機能のフォローは1年以上続ける
参考文献)
  1. 吉田 克己他「亜急性甲状腺炎と無痛性甲状腺炎の診療」日内会誌86:1156~1161,1997
  2. 安田重光「亜急性甲状腺炎【私の治療】」WEB医事新報 2019-09-20
  3. 日本甲状腺学会「亜急性甲状腺炎(急性期)の診断ガイドライン」 https://www.japanthyroid.jp/doctor/guideline/japanese.html
  4. 森昌朋「甲状腺機能異常の診断と治療」日本内科学会雑誌 第101巻 第 9 号・平成24年 9 月10日