- マクロTSHはTSHに抗TSH抗体が結合したもの。抗体はほとんどがIgGだが、IgAによるものの報告もある(*1)
- TSHは28kDの蛋白であり腎臓で容易に濾過されるが、マクロTSHは約150kDであり濾過されにくく、長期間血液中に蓄積されるため、検査で高値になる(*2)
- マクロTSHは生物学的活性は低いので、FT3、FT4は正常範囲となり、潜在性甲状腺機能低下症と似たパターンになることが多い(*2)
- 真の甲状腺機能低下症にマクロTSH血症が合併すると甲状腺ホルモンの充足度によって、TSHが非常に大きな幅で変動する(>100IU/mlとなることもある)
- 潜在性甲状腺機能低下症の1.62%がマクロTSH血症であったとの報告がある(*3)
疾患
内分泌 (9)
1.
糖尿病性昏睡
┗ euDKA(正常血糖ケトアシドーシス)
2.
糖尿病性神経障害
3.
甲状腺機能異常
┗ 甲状腺中毒症
┗ 甲状腺中毒症の評価
┗ Basedow病
┗ 亜急性甲状腺炎
┗ 甲状腺クリーゼ
┗ 無痛性甲状腺炎
┗ 中枢性甲状腺機能亢進症(下垂体性TSH分泌亢進症)
┗ 甲状腺中毒性周期性四肢麻痺
┗ 甲状腺機能低下症
┗ 潜在性甲状腺機能亢進症
┗ 潜在性甲状腺機能低下症
┗ 中枢性甲状腺機能低下症
┗ NTI(Non Thyroidal Illness)
┗ マクロTSH血症
┗ 甲状腺腫瘍に対する穿刺吸引細胞診の適応
13.
原発性アルドステロン症
┗ レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系
14.
SIADH
15.
尿崩症
16.
急性副腎不全
17.
クッシング病・クッシング症候群
18.
褐色細胞腫・パラガングリオーマ
マクロTSH血症
【診断】
- FT4が高めなのにTSHが高値、あるいはFT4値に関わらずTSHが異常高値を示すときはマクロTSH血症の可能性を検討する
-
臨床レベルで利用可能な確定診断のための手段がない
ポリエチレングリコールで処理したTSHの沈降率が90%を越える場合にはマクロTSH血症を疑う
診断のゴールデンスタンダードはゲル濾過で150kDのマクロTSHを確認すること
- 参考文献)
- Miho Fukushita et. al. A case of macro-TSH consisting of IgA-bound TSH Endocrine Journal 2021, 68 (10), 1241-1246
- Xikombiso Nkuna et. al. A macro-TSH: a clinical diagnostic dilemma JIFCC、Vol33 p317-324 2022
- Naoki Hattori et. al. Macro TSH in patients with subclinical hypothyroidism Clnical Endocrinology Volume83, Issue6 December 2015, 923-930