- 血中甲状腺ホルモン濃度は、飢餓や疾病が持続することによって、軽症ではT3が低下し(Low T3症候群)、重篤になったり病状が長引けばTSHの上昇を伴わずにT4の低下(Low T4症候群)を来す
- 急性あるいは慢性疾病で、視床下部・下垂体・甲状腺系の変化により引き起こされる中枢性甲状腺機能低下症と、血中および末梢組織における甲状腺ホルモンの供給が減弱した状態
疾患
内分泌 (9)
1.
糖尿病性昏睡
┗ euDKA(正常血糖ケトアシドーシス)
2.
糖尿病性神経障害
3.
甲状腺機能異常
┗ 甲状腺中毒症
┗ 甲状腺中毒症の評価
┗ Basedow病
┗ 亜急性甲状腺炎
┗ 甲状腺クリーゼ
┗ 無痛性甲状腺炎
┗ 中枢性甲状腺機能亢進症(下垂体性TSH分泌亢進症)
┗ 甲状腺中毒性周期性四肢麻痺
┗ 甲状腺機能低下症
┗ 潜在性甲状腺機能亢進症
┗ 潜在性甲状腺機能低下症
┗ 中枢性甲状腺機能低下症
┗ NTI(Non Thyroidal Illness)
┗ マクロTSH血症
┗ 甲状腺腫瘍に対する穿刺吸引細胞診の適応
13.
原発性アルドステロン症
┗ レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系
14.
SIADH
15.
尿崩症
16.
急性副腎不全
17.
クッシング病・クッシング症候群
18.
褐色細胞腫・パラガングリオーマ
NTI(Non Thyroidal Illness)
【検査所見】
(血清T3 遊離T3)
- 血清T3のみ低下する病態では、臨床的な甲状腺機能低下症状や生理機能への悪影響は示されていない
- NTIの重症度に否定して血清T3は低く、重篤な状態から病状が回復するまでは、T3は基準範囲には戻らない
(血清T4 遊離T4)
- 血清T4はNTIの重症度と継続期間に比例して低下する
- ICU入院患者の70%以上にT3低下を、約50%にT4低下があると言われている
(血清TSH)
- 視床下部および下垂体では、血清T3の低下、特に50%にもおよぶ低下は、本来TRH、TRHを上昇させるはずだが、NTIにおけるTSH値は通常基準値もしくは基準値を下回る。下回っても0.01mU/Lより低下することはない
- 急性期病院入院患者の約3%にTSH<0.1mU/Lを認め、その75%はNTIあるいはグルココルチコイドやドーパミン治療によるとの報告がある
【治療】
- NTIと続発性甲状腺機能低下症の鑑別は困難であり、症状の有無、早急な治療介入の必要性の有無で判断する。症状がなく、早急な治療介入の必要がなければ原疾患の治療を優性してフォローする
-
NTIと原発性甲状腺機能低下症の鑑別では
TSH>20mU/Lでは原発性甲状腺機能低下症と判断
NTIの92%がTSH<20mU/L
したがって、TSH<20mU/Lでは両者の判断は困難症状の有無、早急な治療介入の必要性の有無で判断する
NTIと甲状腺機能亢進症の鑑別
- TSH>0.1mU/LではNTIと判断する
- TSH0.005mU/L以下であれば抗甲状腺薬の使用も検討する
- 参考文献)
- 武田京子 NTI―非甲状腺疾患のpitfall 日内会誌 99:713~719,2010
- 髙岸勝繁「ホスピタリストのための内科診療フローチャート(第2版)」有限会社ニーニュ 2020