euDKA(正常血糖ケトアシドーシス)

euDKA(正常血糖ケトアシドーシス euglycemic diabetic ketoacidosis)

SGLT阻害薬を内服している患者のシックデイに急激に倦怠感や嘔気が現れたが血糖はさほど高くない、という状況で考える

    ・統一された診断基準はない
    ・血糖値300mg/dL未満でDKAを呈する病態
    ・若年者のⅠ型糖尿病に多い
    ・誘因は経口摂取量低下、低炭水化物食、妊娠、手術後、アルコール使用障害や肝硬変など
    ・近年ではSGLT2阻害薬内服中に発症する例が増えてきている。機序には諸説あるが以下のものが有力
      1)SGLT2阻害薬により高血糖がおさえられてインシュリン分泌が低下して、グルカゴン分泌が増加
      2)インスリン/グルカゴン比が低下することにより脂肪分解が亢進、遊離脂肪酸が肝臓で代謝されてケトン体が増える
    ・SGLT2阻害薬の種類によっても発症率が異なり最多はCanagliflozin(カナグル)(*4)
    ・DPP-4阻害薬でも生じるが、そのリスクはSGLT2阻害薬の約1/3

【治療】

    ・治療法は基本的に通常のDKAと同じ
    ・ケトン体産出抑制のためにはじめから糖質の投与が必要となる
    ・ケトン体抑制のために必要になる糖質負荷量は50ー130g/日と考えられているが、SGLT2阻害内服中であれば190g以上必要とする報告がある(*3)

    (各種輸液中の糖質含有量) ソルデム3A 21.5g ソルデム3AG 37.5g ビーフリード 37.5g
    (初期治療レジメンの例)ソルデム3A(500)100ml/時 +ヒューマリンR0.05単位/kg/h   
  DKA、HHSの診断と治療
参考文献)
1. 土居寿之 他「SGLT2阻害薬内服中に感冒を契機に正常血糖ケトアシドーシスをきたした1型糖尿病の1例」日内会誌 111:283~289,2022
2. 加藤勇人 他「SGLT2阻害薬および低炭水化物食開始後に正常血糖糖尿病ケトアシドーシスを起こした2型糖尿病の1例」糖尿病63 (1):26~34,2020
3. 澤村俊孝 他「治療抵抗性を示しケトアシドーシスが遷延したSGLT2阻害薬投与中の正常血糖ケトアシドーシスの1例」 日病総診誌 2019:15(6)
4. 増井伸高「POCTハンター」 中外医学社 2022
5. Antonios Douros et.al. "Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitors and the Risk for Diabetic Ketoacidosis : A Multicenter Cohort Study"Ann Intern Med . 2020 Sep 15;173(6):417-425. doi: 10.7326/M20-0289.