クッシング病、クッシング症候群

    ・慢性的なグルココルチコイド(コルチゾール)の過剰により、特徴的な身体徴候とともに糖・脂質・骨代謝異常や高血圧などを生じる全身性疾患
    ・副腎腺腫によるコルチゾール過剰分泌を狭義のクッシング症候群と呼び、下垂体からのACTH(副腎皮質刺激ホルモン)過剰分泌による病態をクッシング病とする
    ・悪性腫瘍などに伴う異所性ACTH分泌でも同様の病態が生じる

    症状

      ・満月様顔貌
      ・中心性肥満、水牛様脂肪沈着
      ・皮膚菲薄化、腹部赤色皮膚線条
      ・近位筋の筋力低下
      ・挫創、多毛、浮腫
      ・小児では肥満を伴う成長遅延
      ・高血圧、耐糖能異常、骨粗鬆症
      ・月経異常、うつ症状

    検査所見

      ・末梢血リンパ球・好酸球の減少
      ・低K血症、高血糖、LDL-C・中性脂肪の上昇、HDL-Cの低下

    スクリーニング

      ① まず医原性クッシング症候群を除外する
      ② ACTH自律分泌の有無を確認する

    血中ACTH

    低値 正常〜高値

    血中コルチゾール

    低値 正常 高値

    尿中遊離コルチゾール

    低値 正常 高値

    評価 


    【評価】

      (ACTH非依存性クッシング症候群疑いの場合)
      ① オーバーナイト1mgデキサメタゾン抑制試験で翌朝のコルチゾールが抑制不十分(5μg/dL以上)
      ② 日内変動で深夜血中コルチゾール≧7.5μg/dL

       ◎ 上記を満たせばACTH非依存性クッシング症候群と診断される。以降は画像診断により副腎腺腫、副腎癌、副腎皮質過形成を鑑別する。

      (ACTH依存性クッシング症候群疑いの場合)
      ① オーバーナイト0.5mgデキサメタゾン抑制試験で翌朝のコルチゾールが抑制不十分(5μg/dL以上)

       ◎ 専門施設以外では、これ以降の検査は専門機関に紹介すべき。

      ② 次の4つの検査で評価を進める
      1) DDAVP(酢酸デスモプレシン)試験:DDAVP 4μg静注後、血中ACTHが前値の1.5倍以上(保険適応なし)
      2) コルチゾール日内変動の消失(夜間血中コルチゾール5μg/dL以上)
      3) 深夜唾液中コルチゾール値が複数日にわたり施設基準値の1.5倍以上

      ③ 確定診断
      1) CRH試験
      2) 一晩大量デキサメタゾン抑制試験
      3) MRIによる下垂体腫瘍の証明
      4) 選択的静脈洞血サンプリング


        ※感度85%・特異度95%。米国ではcut-offを1.8μg/dLとし、この場合は感度95%・特異度80% (*5)

      治療

        ・クッシング病では下垂体腺腫、副腎性クッシング症候群では副腎腫瘍の摘出が原則
        ・クッシング病では放射線照射やガンマナイフ療法も行われる
        ・いずれも薬物療法の選択肢がある (*2)
        副腎性サブクリニカルクッシング症候群

        ・副腎腺腫を認めるが、クッシング症候群の典型的身体徴候を欠き、早朝血中コルチゾールが正常範囲であることが必須条件
        ・軽度のコルチゾール自律分泌を認める
        ・肥満、糖尿病、高血圧などの生活習慣病を高頻度に伴い、骨量低下や骨質低下も認められる
        ・心筋梗塞の有病率増加が知られている
        ・1mgDST試験でコルチゾール1.8μg/dL以上なら可能性あり
        参考文献)
        1.一色政志「クッシング症候群[私の治療」 Web医事新報 2021年7月3日 P.38
        http://www.j-endo.jp/uploads/files/news/20210823.pdf
        2.大月道夫「Cushing症候群・副腎性 subclinical Cushing症候群の 診断と治療」日内会誌 107:674〜680,2018
        3.柳瀬敏彦「副腎性サブクリニカルクッシング症候群新診断基準」日内会誌 108:2148~2153,2019