疾患
H.pylori除菌療法
【除菌療法の変遷】
-
・ 2000年にH.pylori除菌療法はPPIとアモキシリン(AMO)、クラリスロマイシン(CAM)の3剤療法が保険適応となった
・当初は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍のみを適応としていたが、2013年にはH.pylori感染胃炎にまで適応が拡大され、事実上、全ての感染者に対する保険治療が可能になった
・当初は90%ほどの除菌成功率だったが、CAM耐性菌の増加に伴い70%台に低下した
・2013年にCAMをメトロニダゾール(MNZ)に置き換える二次除菌が保険適応になり、この3剤では90%程度の除菌率が実現された
・こうして、CAMを用いる一次除菌と、MNZを用いる二次除菌を行う事で95%以上の除菌成功率が達成された
・2015年にカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)が除菌に用いられるようになると、一次除菌率は再び90%台に改善した
・CAMの抗菌活性は胃内pHに強く依存していおり、胃内pHが中性域になると、CAMの抗菌活性は130倍に増強される。P-CABはPPIに比べて胃酸分泌抑制効果が強いため、CAM耐性菌であっても概ね除菌が可能になった
【除菌療法のレジメン】

・一次除菌においてCAM800mg/日は、400mg/日と比べて除菌率に有意差がなく、副作用は多いため推奨されない
・一次除菌でMNZは保険適応がない
・三次除菌は保険適応がなく、現在のところ自費扱いになる。費用はおよそ4万円
・除菌率は70〜90%程度
(ペニシリンアレルギーの場合)
・ペニシリンアレルギーの頻度は3〜7%と比較的高い
・VPZ*CAM+MNZ、VPZ+MNZ+STFXなど
・保険適応はないので自費扱いか詳記が必要になる
【除菌治療の副作用】
*以下は基本的に一次除菌についての頻度である、二次除菌では出現率が変わる
(短期的副作用)
・下痢(7.5〜38.7%)、軟便(10.1〜16,4%)
・味覚異常(特にCAMでは口苦1.4〜20,9% )、口内炎(2.3%)
・皮疹(1.3〜5.6%)
・出血性腸炎(0.3〜0.6%) 速やかに内服を中止して来院 → 禁食・補液
(長期的副作用)
・胃食道逆流(10.5〜27.9%)、肥満、脂質異常症

【除菌療法にあたって患者に説明しておくべきこと】
【除菌成否判定】

-
‰(パーミル): 1000分の1を示す単位
-
・尿素呼気試験および便中抗原法では、原則的にPPIやP-CABは判定前に2週間以上休薬する
・除菌療法後2ヶ月後程度で判定されることが多いが、確実な判定には6ヶ月以上
・抗H.pylori抗体は半減期が6ヶ月であり陰性化するのに数年かかるため適さない
・便中抗原法は尿素呼気試験とほぼ同等だが、便中抗原法のほうがやや偽陰性が多い
-
参考文献)
1. 古田隆久 他「Helicobacter pylori 感染胃炎に対する個別化治療の現状と課題」Gastroenterological Endoscopy Vol.64(7)1307-1313 , Jul. 2022
2. 古田隆久「本邦におけるHelicobacter pylori除菌治療の問題点」日内会誌 110:20~28,2021〕
3. 日本ヘリコバクター・ピロリ学会ガイドライン作成委員会「h.pylori感染の診断と治療のガイドライン」
4. 村上和成「Helicobacter pylori除菌治療の現状と除菌治療後の諸問題」日内会誌 106:16~22,2017
5. 村上和成「H. pylori感染診断・治療の最前線:上手な除菌と成否判定」日本内科学会雑誌 106巻 9号 1968-1974 2017
