特発性食道破裂

  (典型的な状況) 30〜50代の男性が飲酒後に嘔吐したのち激しい胸痛を訴える

疫学

  • 急激な食道内圧の上昇により、食道壁の損傷を生じる疾患
  • 誘因は嘔吐、咳嗽、吃逆、笑い、重い荷物を持ち上げる、出産、てんかん発作などだが、嘔吐が約70%を占める
  • 30〜50代の男性に多く8割程度を占める。特に飲酒後の嘔吐が多い。これらのあとに急に生じた胸痛であれば疑うが、意識して発症の状況を問診する必要がある
  • 性別では10 対1と男性に圧倒的に多い
  • 好発部位は筋層が弱く、首位に臓器がないため圧が逃げやすい下部食道左壁

症状

  • 初発症状は胸痛、腹痛、呼吸困難、背部痛
  • 早期診断と治療が極めて重要であり、遅れると膿胸や縦隔膿瘍を引き起こして予後不良となる。早期診断治療ができれば救命率は90%を「越えるが、診断治療まで12時間以上経過すると半数前後が死亡する。残念ながら初診時の正診率は30〜50%と報告されている
  • 胃十二指腸潰瘍穿孔、Mallory Weiss 症候群などと誤診されることが多い
  • 24時間以内に治療が開始された場合の死亡率は10~20%なのに対し、発症後24時間以降の治療開始例での死亡率は20~27%と報告されている
  • 診断

  • 90%以上に胸部単純レントゲンで異常所見を認める。縦隔気腫、腹腔内free air、肺野浸潤影、胸水
  • 疑われた場合は胸腹部造影CTやガストログラフィンを用いた上部消化管造影 ・上部消化管内視鏡は破裂部位の検索のために行われるが、安易には行いない。病態を悪化させる可能性があり正診率も高くはない
  • 保存治療という選択もあり得る。