急性虫垂炎
  • 虫垂の急性炎症
  • 虫垂内腔の閉塞が発生の原因であると考えられている。原因はリンパ組織過形成によるものが多いが、糞石、異物、寄生虫によるものもある
  • 閉塞により、腹部膨隆、腸内細菌感染、虚血が生じる
  • 無治療では、壊死、壊疽、穿孔に進行し死亡率は50%以上となる


【症状】

  • まず、心窩部痛から始まり、数時間〜数日後には右下腹部に移動
  • 心窩部痛の後に悪心、嘔吐が生じる。その逆はない。逆なら虫垂炎は否定してよい
  • 虫垂の位置によって、後腹膜に近い場合は腰痛を訴えることもある

【診断】

  • 右下腹部Mcburney付近の打診痛、あるいは圧痛と反跳痛
  • 虫垂が背側に回り込んで腸腰筋に接している場合には腸腰筋テスト(下図)が陽性になりやすい ・確定診断は事実上、手術所見
  • 虫垂の炎症が腹腔下部背側に波及すると閉鎖筋テスト(下図)が陽性になりやすい
  • 様々な有名な徴候があるが診断にとって意味があるものは限られている。比較的価値の高いものを下記に示す
  • 血液検査では白血球数がやや有用。他の検査は感度、特異性が低い
  • 症状や理学所見で虫垂炎が疑われる、あるいは否定できない場合には必ず画像診断に進む
  • 腹部超音波検査や腹部造影CTで虫垂腫大、璧肥厚、糞石などを確認できれば臨床診断がなりたつ(腹部造影CTの方が優れている)。他の所見としては周囲の脂肪濃度上昇、液体貯留など
  • 腹部超音波検査では虫垂の短軸径6mm以上を腫大とする。蜂窩織炎となれば8mm以上、壊疽性にまで進行すれば10mm以上となる
  • 確定診断は事実上、手術所見


【虫垂炎の事後確率診断】

(性別)

    男性 女性

(年代)

    20歳未満 20〜39歳 40〜59歳 60〜79歳 80歳以上

(症状)

★ 以下の選択肢で、左からはじめて最初にあてはまるものを選択

    腹痛が嘔吐に先行する 嘔吐が腹痛に先行する 右下腹部痛 心窩部から右下腹部への痛みの移動 あてはまるものがない

(理学所見)

    筋強直 打診痛 腸腰筋テスト 閉鎖筋テスト どの所見もない

(画像検査)

    腹部造影CT所見あり 腹部造影CT所見なし 腹部超音波検査所見あり 腹部超音波検査所見あり どちらも未施行

事後確率   

【治療】

(穿孔性虫垂炎)

  • 緊急手術の適応
  • 現在は腹腔鏡下虫垂切除術が主流

(非穿孔性虫垂炎)

  • 抗生物質による保存治療が可能な例もある
  • 保存的治療で二次的に手術が必要になるのは10〜37%。中央値は4.2〜7ヶ月
参考文献)
  1. 急性腹症診療ガイドライン出版委員会「急性腹症ガイドライン2015」医学書院
    https://minds.jcqhc.or.jp/docs/minds/acute-abdomen/acute-abdomen-front-matter.pdf#view=FitV
  2. Benson Yeh, MD Does This Adult Patient Have Appendicitis? Ann Emerg Med. 2008;52:301-303 2008
  3. Berry J, Malt RA. Appendicitis near its centenary. Ann Surg 1984 ; 200 : 567-575.
  4. David R. Flum, M.D. Acute Appendicitis-Appendectomy or the "Antibiotics First" Strategy NEJM, May 14,2015, Clinical Practice 5.今枝博之「虫垂炎」日本医事新報 Webコンテンツ 2017-03-28登録
  5. 堀江久永 「虫垂炎[私の治療]」日本医事新報 Webコンテンツ 2020-03-27登録