原発性硬化性胆管炎

原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis;PSC)

    ・肝内外の胆管に多発性・びまん性の狭窄が生じる胆汁うっ滞性の非常に稀な疾患
    ・病因は不明
    ・PSC 患者の一親等における PSC の有病率は一般人口の100倍近いと報告されており、発症に遺伝的素因が関与していることは確実

【症状】

    ・胆管炎、搔痒感、黄疸などが主な症状
    ・進行性の慢性疾患で肝不全に至る
    ・本邦での推定患者総数は1,211人、人口10万人あたりの有病率は0.95人
    ・男性に多い
    ・診断時年齢の中央値は43.5歳、年齢分布は若年者と高齢者の二峰性

【診断】

    ・診断は非常に困難
    ・胆汁うっ滞に起因する症状と、血液検査にて疑う
    ・ALPがさほど高くはなくとも PSC の可能性を除外できない
    ・さらに、腹部エコーや腹部CTでの胆管拡張所見を参考にする



    ・疑えば、必ず専門医に紹介する
    ・確定診断のためには胆管の変化を画像診断にて形態的に判断し、さらに二次性硬化性胆管炎を否定する
    ・IgG4 関連硬化性胆管炎はステロイドに反応する比較的予後良好な疾患であり、これとの鑑別は臨床的に非常に重要である

    【治療】

      ・根本的な治療がなく、最終的には肝移植が必要となる場合も多い
      ・ウルソデオキシコール酸は肝胆道系酵素の改善を認めるが予後の改善効果はない
      ・免疫抑制剤やベザフィブラート製剤も予後改善効果は明らかでは無い
      ・皮膚掻痒に対してコレスチラミンが用いられるが有用性は低い

    【予後】

      ・本邦における5年・10年全生存率は81.3%、69.9%、肝移植なし5年・10年生存率はそれぞれ7.4%、54.9%
      ・自然経過および予後は多様で診断から10年以上経過しても悪化しない症例もあるため、安易に厳しい説明をしないようにする
      ・炎症性腸疾患の合併率は本邦では40%と欧米に比べて低いが、若年者に限ると61%となり欧米と同様
      ・高齢者では自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis;AIP)を合併する頻度が高い
      ・胆管癌の合併率は14%
      参考文献)
      1. 伊佐山浩通 他「硬化性胆管炎をめぐる最近の進歩~PSC と IgG4-SC~」日消誌 2019;116:631―638
      2.難病情報センター「原発性硬化性胆管炎(指定難病94)」
      https://www.nanbyou.or.jp/entry/3968
      3.田妻進 「硬化性胆管炎診療の現状と展望」日消誌 2019;116:617―623
      4.田中篤 「原発性硬化性胆管炎(PSC)の up-to-date」胆道 32 巻 2 号 241~250(2018)