ウイルソン病

ウイルソン病

  • 胆汁中への銅排泄が障害される常染色体劣性遺伝の先天性銅過剰症
  • 発症年齢は4歳から40歳以上と幅がある
  • 3〜4万人に1人で、保因者は100〜120人に1人と考えられている
  • 銅の組織沈着により肝機能障害、様々な神経症状、精神症状、腎障害等全身の臓器障害をおこす
  • 早期に診断され、適切な治療を続けた場合はほぼ予後良好である。しかしながら、治療中断は致死的

【病形と臨床症状】

次の3つの病型に分類される

  1. 肝型
    • 発症年齢は主として5〜35歳だが、約3%は40歳以上で発症する例もある ・慢性肝炎、急性肝炎、急性肝不全、Coombs陰性溶血性貧血、急性腎不全など様々な病像を呈する。著明な溶血の場合は一般に重度の肝障害を伴う
    • 自覚症状は、黄疸、嘔吐、食慾不振、腹水、肝脾腫、消化管出血など
    • Kayser-Fleisher輪の検出率は50%程度
  2. 神経型
    • 発症年齢は主として6〜40歳だが、多くは15〜20歳ごろである
    • 初発症状は言語障害、不随意運動、書字拙劣などが多い。意欲低下、集中力低下、突然の気分変調、性格変化などもある。うつ、統合失調症などと誤診される場合がある
    • 一般検査では肝機能障害は認めない
    • Kayser-Fleisher輪の検出率が高い(72〜100%)

若年の原因不明の神経症状や精神疾患では少なくともスクリーニングのために血清セルロプラスミンを測定する

【診断】

血清セルロプラスミン:10mg/dL以下では強く疑われ、20mg/dL以下でも鑑別する必要がある。正常であっても否定することはできない
24時間尿中銅:100μg/日以上では強く疑われ、40〜100μg/日でも鑑別が必要

  • この二つの検査で「強い疑い」あるいは「鑑別が必要」であれば専門医に紹介すべき

【治療】

  • D-ペニシラミン、トリエンチンや酢酸亜鉛の内服を生涯にわたって続ける必要がある
参考文献)
  1. 難病情報センター「ウイルソン病(指定難病171)」
  2. 清水教一 「ウイルソン病の診断と治療のポイント─日本版ガイドラインの発表をふまえて─」臨床神経 2019;59:565-569
  3. 日本小児栄養消化器肝臓学会 他「Wilson病診療ガイドライン 2015 詳細版」