A型肝炎
  • 一本鎖RNAをゲノムとするウイルス
  • 基本的には直接的な細胞傷害性は示さず、宿主の免疫応答を介して肝炎を惹起する
  • 感染経路は糞口感染
  • 感染者との緊密な接触、あるいは汚染された食物や水の摂取により感染する
  • 一般的には上下水道の整備が不十分な発展途上国に多く、先進国では少ない
  • 本邦ではウイルス性急性肝炎の10%以上を占めている
  • 約500人/年の発症が報告されている
  • いったん感染すると中和抗体が産生されて終生免疫となる
  • 日本では秋に少なく、冬から春、夏にかけての発生が多い
  • 4類感染症であり直ちに届け出が必要

【感染経路】

  • 海外渡航による輸入A型肝炎が約20%
  • ほとんどが中国、インド、東南アジア地域での感染
  • カキなどの魚介類の生食、輸入食材からの感染、同性愛者を含む性行為感染など

【症状】

  • 潜伏期は2〜7週間(平均4週間)
  • 嘔気、食欲不振、発熱、倦怠感、腹痛などで発症
  • 数日〜1週間以内に黄疸や褐色尿を呈する場合が多い
  • 通常は1〜2ヶ月の経過で回復する
  • 高齢者は重症化しやすい

【検査】

  • 急性肝炎はIgM-HAV抗体で診断するが、発症直後では陰性の場合もある
  • IgM-HAV抗体は発症から約1カ月後にピークに達し、3〜6カ月後には陰性となる

【治療】

  • 通常は一過性の感染であり対症療法のみで治癒する
  • 昏睡型急性肝不全を発症する場合がある(<1%)
  • 特異的な抗ウイルス療法はない

【予防】

  • 細胞培養による国産の乾燥不活化ワクチンがある
  • 日本では、発展途上国への渡航者、医療従事者、基礎側管保有者などが接種対象
参考文献)
  1. 井上淳 正宗淳「A型,E型肝炎の日本における現況と課題」日内会誌 109:1439~1444,2020
  2. 岡本宏明 「A,E型肝炎」日内会誌 106:433~438,2017