急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)
  • 38℃以上の高熱とともに、全身にびまん性の紅斑や紅皮症をきたし、無数の小膿疱を伴う薬疹
  • 欧米での発症頻度は1〜5人/100万人/年
【原因薬物】
  • ほぼ全ての抗生剤
  • 抗真菌薬ではイトラコナゾール、テルビナフィン
  • ほか、アロプリノール、カルバマゼピン、ジルチアゼム、アセトアミノフェンなど
【症状】

  • 原因薬物の内服後、数時間〜数日以内に発症する場合(すでに感作されている場合)と、1〜2週間以内に発症する場合(初回)の場合がある
  • 全身症状)38℃以上の発熱、全身倦怠感、食欲不振などの症状
    皮疹)
  • 全身に急速に出現、拡大するびまん性の紅斑で、無数の5mm大以下の小膿疱を伴う
  • 小膿疱は毛孔に一致しない
  • 紅斑の色調は間擦部、圧迫部などの強い傾向
【初期の対応と評価】
    ① 上記のような原因となりうる薬物を用いている患者にこのような症状を求めた場合にはすぐに中止する
    ② 血液検査
  • 好中球増加≧7000/㎥
  • CRP上昇
  • しばしば好酸球増多
  • ASO(下記の急性汎発性膿疱性細菌疹では発症2週間程度で上昇)
  • ③ 細菌学的検査
  • 膿疱内容の培養、血液培養
  • ④ 皮膚生検
  • 表皮は軽度の海綿状態を示し、角層下膿疱、あるいは表皮上層に膿疱を認める。真皮上層は浮腫性で、血管周囲に好中球、好酸球、リンパ球の浸潤を認める
 ASO(ASLO) A群β溶連菌が産生するストレプトリジンO(ASO)に対する抗体を検出する方法。感染後2週目頃から上昇し、3~5週でピークに達し、その後数カ月で下降
【診断】
【鑑別診断】
    膿疱性乾癬 乾癬の既往があり乾癬の局面が存在する。内服中の薬剤とは無関係
    SJS/TEN 通常は膿疱を伴わない。表皮剥離やびらんが広範
    DIHS 通常は膿疱を伴わない。比較的限られた原因薬物内服歴。全身のリンパ節腫脹。肝機能障害など
    急性汎発性膿疱性細菌疹 多くは上気道の連鎖球菌感染症に続発して全身に散在性に膿疱と小紫斑が出現。感染後約2週からASOの上昇がみられる
    敗血症 全身に散在性に膿疱が見られることがある
【治療】
  • 原因となり得る薬剤の即時中止
  • 原因医薬品が除去されれば小膿疱は数日で乾燥し落屑となる。約2週間で治癒する
  • 増悪傾向がある場合は、細菌感染の除外を進めながら、ステロイドを開始する。PSL0.5〜0.7mg/kg/日から開始する
参考文献)
  1. 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 急性汎発性発疹性膿疱症」
  2. 吉田幸恵 他「ケロリンRが原因と考えられた Acute Generalized Exanthematous Pustulosis の1例」アレルギー 56(10), 1298―1300,2007
  3. 水口誠人 他「塩酸ジルチアゼム投与後に急性汎発性発疹性膿疱症 (acute generalized exanthematous pustulosis)を来した1例」Tokushima Red Cross Hospital Medical Journal 24:52-56,2019