スティーブンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死症
  • 全身の皮膚に紅斑,水疱,びらんなどが多発するし、同時に口唇・口腔。眼、鼻、外陰部などの粘膜にびらん(ただれ)を生じる薬疹
  • 皮膚粘膜症候群とも呼ばれる
  • スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson症候群:SJS)と中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)の病態は同じであり、剥離皮膚(びらん)面積が10%未満をSJS、10%以上30%未満のものをoverlap SJS/TENとし、30%以上がTENである
  • これらを合わせた発症率は4.4人/100万人
  • 幅広い年齢層に発症し、性差はみられない

【原因】

  • 多く(50%以上)は薬剤性だが、ウイルスやマイコプラズマ感染に続発することもある
  • 薬剤では初回投与後、1〜2週間の内服で発症することが多いが、すでに感作されている場合は数日で発症する
  • 薬剤のうちでは抗菌薬が最多で全体の25%以上と報告されている(*5)
  • それ以外の薬剤としては抗痙攣剤、消炎鎮痛剤など
  • 厚労省の報告で単一の原因薬剤として最多はアロプリノール(*6)

* スルホンアミド系 : 主としてST合剤(バクタ、バクトラミン)の成分であるサルファメトキサゾール

【病態】

  • 表皮細胞と粘膜上皮細胞の細胞死による表皮や粘膜上皮の壊死性変化

【症状】

  • 早期診断はなかなかに困難

  • 初期)
    38,5℃以上の発熱、咽頭痛、鼻汁、全身倦怠感、関節痛、筋痛、食欲低下など非特異的
  • この段階では急性上気道炎や感冒と区別しがたい
  • 皮膚症状)
    多くは初期症状から2-3日後に出現
    表皮 全身に多発性の多形紅斑を生じ、水疱やびらんを伴う。疼痛が強い
    粘膜 口唇、口腔、眼、外陰部などに腫脹、表皮剥離、びらん
    • 眼では結膜の充血、角膜や粘膜のびらん、偽膜形成
    • 尿道にびらんが生じて排尿時痛となることもある
  • 全身の皮疹は目立たず、粘膜疹のみのことがあり、自覚症状は咽頭痛や鼻汁になるので非常に「風邪」と紛らわしい
  • 初見では口唇の腫脹や皮膚剥離、痂皮などしか分からない場合がある(*7)
  • 当然のことであるが強い咽頭痛があれば、必ず咽頭、口腔の観察を行う
  • 臓器障害)
    経過中に肝臓、腎臓、気管・気管支、消化管など広範囲の上皮に障害を起こす
    合併症)
    敗血症やDICを合併することがある

【診断】

    ・皮膚生検による病理所見が必須項目であり、皮膚科専門医に任せる
    ・早期診断にも皮膚の病理所見が重要とされている
    ・難病情報センターに診断基準が示されている
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【治療】

    ① 被疑薬を中止する
    ② ステロイド治療
     ・strongestのステロイド剤の外用
     ・内服ステロイド剤
        プレドニゾロン 30-60mg/日
     ・重症例では発症早期(7日以内)ステロイドパルス療法
        ソル・メドロール 500ー100mg/日X3日
    ③ 血漿交換や免疫グロブリン投与、免疫抑制剤投与を行う場合もある
        γグロブリン(献血グロベニン) 5g/日X3日
    ④ 治癒した場合でも再発予防が非常に重要であり、原因薬物の検索は重要である

【予後・後遺症】

    ・死亡率は3-10%とされている
    ・眼病変は、重篤な視力障害や失明、眼球癒着、高度のドライアイなどの後遺症を残すことが多い
  • 「風邪」と思っても、強い眼瞼充血や口唇の腫脹や表皮剥離があれば疑ってみる
  • 多発する広範な多形紅斑では必ず想定すべき
    • 参考文献)
      1. 清水宏「あたらしい皮膚科学」中山書店 71:456-469,2006
      2. 石川治 田村敦志「皮疹からみる皮膚病理」南江堂 2010
      3. 山崎雄一郎 他「全ての診療科で役立つ皮膚診療のコツ」羊土社 2011
      4. 西山茂夫「皮膚病アトラス」文光堂 2005 5. Erika Yue Lee et.al. Worldwide Prevalence of Antibiotic-Associated Stevens-Johnson Syndrome and Toxic Epidermal Necrolysis: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA dermatology. 2023 Apr 01;159(4);384-392.
      6. 厚生労働省「医薬品による重篤な皮膚障害について」
      https://www.mhlw.go.jp/www1/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/261-1.pdf
      7. 山口裕聖 他「発熱、咽頭痛が初発症状であったStevens―Johnson症候群の2症例」耳展 65:1;27~34,2022
      8. 藤本和久「スティーブンス・ジョンソン症候群〔SJS :Stevens-Johnson Syndrome〕、中毒性表皮壊死症〔TEN : Toxic Epidermal Necrolysis〕」希少疾患ライブラリ ケアネット
      https://www.carenet.com/report/library/general/rare/sjs_ten.html