- 発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症
- 一本鎖RNAウイルスでエンベロープを有し、人が唯一の宿主
- 飛沫感染で伝播され、基本再生産数は5〜7
- 風疹に感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染すると、出生児が先天性風疹症候群を発症する可能性がある
疾患
風疹
【症状(成人例)】
-
以下、成人例での臨床像について文献2を参考にして記述する
- 潜伏期は14〜21日(平均16-18日)程度
- 一般的に麻疹より軽症
- 小児では軽症が多いが、成人感染例ではやや重症になる
- 3徴候は発熱、発疹、頸部リンパ節腫脹
- 発熱はほとんどの例に見られる
- 眼球結膜の充血も高率
- 不顕性感染が15〜30%程度

リンパ節腫脹)
- 耳介後部、後頭部、頸部が多く、3〜6週間持続
皮疹)
- 小さい淡紅色斑〜丘疹、24時間以内に全身に拡大し、3-7日で消褪
- しだいに、赤みが強くなり癒合

検査所見)
- 一般的なウイルス感染と同様で特徴的なものはない
- 白血球減少、血小板減少、肝機能障害、LDH上昇など
- 肝機能障害ではAST、ALT<100IU/L
合併症)
- 血小板減少性紫斑病(1/3000〜5000人)、急性脳炎(1/4000〜6000人)などがあるが一般的に予後は良好
- 成人では、5〜30%で手の強ばりや痛み、関節炎などが起こるがほとんどは一過性
【先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)】
- 妊娠20週頃までの妊婦が感染すると、ウイルスが胎児にも感染し、先天異常を含む様々な重篤な合併症、後遺症を生じる
- 妊娠中の感染時期によって発症頻度、重症度や症状のパターンが異なる
- 新生児期には明かな症候を認めなくても5歳までに顕在化する例も存在し、定期的かつ長期的なフォローが必要
- CRS児は体液に風疹ウイルスを約一年排泄し続けるため対策が必要
- 風疹ワクチンは生ワクチンであるため、妊婦は接種できず、接種後は2ヶ月の避妊が必要となる

【診断】
① 臨床診断
- 発熱を伴う皮疹では、鑑別診断に麻疹と風疹を想定する
-
ワクチン接種や罹患歴を確認する
-
風疹では、年齢や性別によってしっかりとしたワクチン接種が行われていないグループがあり、疑ったらまず生年月日を確認する
-
風疹では、年齢や性別によってしっかりとしたワクチン接種が行われていないグループがあり、疑ったらまず生年月日を確認する
- リンパ節腫脹を確認する
- 皮疹の拡大の様子を確認する(小紅斑や紅色小丘疹が顔面から始まって1〜数日で下行性に全身に拡大する)
-
3徴がすべて揃えば保健所へのとロケで基準が満たされる。届け出すれば通常PCRによる診断を行ってくれる
- 3徴が揃わない例では臨床診断は困難
② 病原体診断
- 分離同定、PCR法、抗風疹IgM抗体の3つの方法があるが、保険適応のあるのはIgM抗体のみ
- IgM抗体は4日以内は偽陰性が多く、疑った場合は5日目以降の検査が望ましいがそれでも偽陰性がある
- 麻疹の偽陽性例も26%でみられたという報告もある(*2)
- 判断に迷う場合は麻疹とともにそれぞれのIgM,IgG抗体をペア血清でとる(HI法では4倍以上、EIA法では2倍以上)
【治療と対応】
- 特異的な治療はなく、対症療法となる
- 学校保健法では皮疹消失まで出席停止扱いとなる。成人でもこれに準じる
- 周囲に妊婦がいるかどうかは必ず確認する
-
医療機関における対策については以下を参照
医療機関における風しん対策ガイドライン
- 参考文献)
- 感染症動向調査(IDWR).2013;http:!www.ni h.go.jp!niid!ja!rubella-m-111!700-idsc!2131-rube lla-doko.html.Accessed 5!15, 2013.
- 加藤博史 他「成人における風疹の臨床像についての検討」感染症誌 87:603~607,2013
・比較的若年の患者27例の後方視的観察研究- 國松淳和「外来でよく診るかぜ以外のウイルス疾患」医事新報社 2018
- 国立感染研究所「風疹とは」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/430-rubella-intro.html- 守本倫子「風疹ウイルス」2015 — 日耳鼻. 118―907. 〔専門医講習会テキストシリーズ〕