血球貪食症候群

欧米では主として、血球貪食性リンパ組織球症(hemo- phagocytic lymphohistiocytosis:HLH) と称される

  • 著しい高サイト力イン血症によって過剰な炎症反応が引き起こされ、肝臓や脾臓、リンパ節、骨髄などの網内系のマクロファージやキラーT細胞が過剰に活性化および増殖して組織に浸潤し全身の組織障害を生じる病態。活性化されたマクロファージやキラーT細胞はさらに大量のサイトカインを放出する
  • マクロファージやキラーT細胞は本来、非自己の異物や病原体を貪食して処理しているが、本病態では自己と非自己の区別ができなくなり、自己血球の貪食が生じる
  • 急速に進行する病態であり、迅速な診断と治療が不可欠
  • 死亡率が非常に高く危険な病態である

◎ 急性の経過で発熱、2系統以上の血球減少、DIC、LDH上昇、肝機能障害などのうち複数の所見を認めたときに疑う

◎ 敗血症にDICを合併した状態と誤認しやすく、評価治療が遅れれば致命的なので、そのような場合は必ず想定する


【分類】

  • 一次性と二次性に大別される
  • 一次性は遺伝子変異をともなう様々な遺伝子疾患で発症し、多くは小児である
  • 二次性には、感染症、悪性腫瘍、自己免疫疾患に関連して発症する

【症状と検査所見】

  • 血清フェリチンと可溶性IL-2受容体は病勢をよく反映する
  • フェリチンは異常高値が多く、特に10,000ng/ml以上の場合は診断的な意義が大きい

【病理所見】

  • 骨髄・脾臓・リンパ節などの網内系組織におけるマクロファージによる血球の貪食像
  • 血球貪食像が明らかでない場合も多く、なくても否定はできない

【診断】

  • 一次性HPSと二次性HPSには別の診断基準が用いられる
  • 免疫抑制状態とはHIV感染mあるいは長期間の免疫抑制剤(ステロイド、シクロスポリン、アザチオプリンなど)投与を受けている場合に該当とする


【治療】

一次性HPS)

  • エトポシド+シクロスポリン+デキサメタゾン → 造血幹細胞移植

二次性HPS)

  • 感染 各種抗生剤、免疫グロブリン投与、血漿交換
  • 悪性腫瘍 リンパ腫に対するステロイド±シクロスポリン、造血幹細胞移植
  • 膠原病 パルスを含むステロイド治療、シクロスポリン、免疫グロブリン投与、生物学的製剤
参考文献)
  1. Ramos-Casals M,et al. Adult haemophagocytic syndrome Volume 383, Issue 9927P1503-1516 April 26, 2014 Lancet. 2014
  2. 駒形嘉紀「マクロファージ活性化症候群と血球貪食症候群」日内会誌 105:1209~1215,2016
  3. Kumakura S, et al : Autoimmune-associated hemophagocytic syndrome. Mod Rheumatol 14 : 205―215, 2004.
  4. Fardet L. et. al. Development and validation of the HScore, a score for the diagnosis of reactive hemophagocytic syndrome Arthritis Rheumatol 2014 Sep;66(9):2613-20.
  5. 熊倉俊一「血球貪食症候群(HPS)の病態・診断・治療」血栓止血誌 2018; 2(9 6): 642-646
  6. 石井義洋「卒後20年総合内科医の診断術 Ver.3」第3版 中外医学社 2024