特発性血小板減少性紫斑病
  • 血小板膜蛋白に対する自己抗体が発言し、血小板に結合する結果、主として脾臓における網内系細胞での血小板破壊が亢進して血小板減少を来す
  • 欧米においては一次性免疫性血小板減少症(primary immune thrombocytopenia)と呼ばれることが多い
  • 通常、赤血球、白血球系に異常を認めず、骨髄での巨核球産生能の低下も見られない
  • 患者数は25000人前後
  • 小児ITPと成人ITPでは経過が異なる
  • 小児ITPでは大部分が半年以内に血小板数が正常化する。慢性化は10%程度
  • 成人慢性ITPでは、20%は治癒するが、多くは長期のステロイド治療を要する
  • 慢性・難治性ITPの中には先天性血小板減少症・異常症が含まれている可能性がある

【症状】

  • 小児ITPでは、多くの場合はウイルス感染が先行し、急激に発症するが数週〜数ヶ月の化火で90%程度が治癒する
  • 初発症状は皮下出血であり、重症化すると、歯肉出血、鼻出血、下血、血尿、頭蓋内出血などが生じる
  • 出血症状が現れるのは、一般的に血小板数5万/μL以下。1万/μLを切ると重篤な出血症状が出現しやすい

【診断】

  • 骨髄検査が必要
  • PAIgG 感度91% 特異度27% 陽性尤度比 1.25 陰性尤度比 0.33(*3)

【治療】

  • H.Pilori菌が陽性の場合はまず除菌を行う。50〜70%で血小板数が増加する
  • 除菌で十分な効果が得られない、あるいはH.Pilori菌陰性の場合は出血症状および血小板数に基づいて治療適応を判断
  • 血小板数2万/μL以上で出血症状なし、あるいは軽微の場合は無治療で注意深く経過観察してもよい。60歳以上の高齢者、あるいはスポーツ選手など出血リスクが高い例では治療対象となりうる
  • 薬剤治療の第1選択はステロイド
  • ステロイドで十分な効果が得られない、あるいは副作用のために継続困難な場合は脾摘を行う
  • 脾摘で80%に血小板増加反応が認められるが、約20%が再発、永続的効果は約60%
  • ステロイドと脾摘が無効で血小板数が継続的に2万/μL以下の場合はトロンボポエチン(TPO)受容体作動薬、リツキシマブ、シクロスポリン、ステロイドを検討する
  • 重篤で緊急の対応が必要な場合は、免疫グロブリン静注、血小板輸血、ステロイドパススなどを検討
参考文献)
  1. 小松則夫「特発性血小板減少性紫斑病(免疫性血小板減少症)」日内会誌 103:1593~1598,2014
  2. 厚生労働省難治性疾患克服研究事業 「成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド 2012年版」臨床血液 53:4 433-442
  3. John G.et al. A Prospective Study of the Usefulness of the Measurement of Platelet-Associated IgG for the Diagnosis of Idiopathic Thrombocytopenic Purpura American Society of Hematology. Blood, Vol. 60, No. 4 (October), 1982
  4. 桑名正隆「特発性血小板減少性紫斑病[私の治療]」日本医事新報Web 2020年1月25日登録
  5. 「特発性血小板減少性紫斑病(指定難病63)」難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/157