症候
しびれ
しびれ
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・単神経障害は頸椎症、椎間板ヘルニア、手根管症候群、胸郭出口症候群などの整形学的疾患が原因のことが多い
・プライマリケアの外来をしびれを主訴として受診する単神経障害を除く原因疾患として最も多いのは糖尿病性神経障害で約50%に及ぶ
・次に多いのはアルコール性神経障害でおよそ9%
・原因不明の特発性多発神経炎(CIAP)は12%におよぶ。治療法はないが、進行は遅く、基本的に経過観察のみでよい
・その他、CIPD、尿毒症、慢性肝障害、薬剤性、悪性腫瘍、栄養障害など原因は非常に多岐にわたる
【STEP1】「しびれ」の意味を確認する
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・患者が「しびれる」と訴える場合、それは必ずしも感覚障害を意味するとは限らない
・感覚低下(鈍麻)、異常感覚(錯感覚)例として正座の足のしびれ、痛覚過敏の3つを患者に聞くことが大事。これらにあてはまらないしびれは運動麻痺
・次の4つを意識して問診し、このうちどれに該当するかを確認する
異常感覚(ビリビリ、ジンジン、チクチク etc.)
感覚低下(感覚が鈍い、麻酔されたような感じ etc.)
痛覚過敏(アロディニアなどを含む)
運動障害(力が入らない、思うように動かない、手で細かい作業ができない etc.)
冷えの感覚(冷たい、冷えてしょうがない、皮膚が蒼白になる)
手が震える
→ 患者の訴える「しびれ」が感覚障害であればSTEP2へ
(末梢神経障害の分類)
脱髄性ニューロパチー 末梢神経を構成する髄鞘(ミエリン)が障害され破壊される(脱髄)
軸索変性型ニューロパチー primaryに軸索が障害される
【STEP2】リスクの高いしびれの除外
① 突然発症のしびれでは、脳血管障害、ギラン・バレー症候群(GBS)、悪性腫瘍、薬物・毒物中毒、急性動脈閉塞の可能性を検討する
② 左右非対称もしくはlength dependentでない場合は、血管炎やギラン・バレー症候群、CIDPを考える
③ 下肢のしびれに膀胱直腸障害を合併する場合は、急性の脊髄・馬尾障害を考える
ハイリスクな疾患を示唆する所見
◎ これらの所見に該当すれば積極的に神経伝導速度を測定、あるいは神経内科に紹介する
診断:
ギラン・バレー症候群
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・Guillain-Barre症候群でも亜急性の手袋・靴下型の感覚障害が生じるが、基本的に主訴は筋力低下である
脊髄血管障害
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・突然に発症する対麻痺と解離性感覚障害
CIDP
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・ここに属する病型のなかで「しびれ」が主訴となるのは純粋感覚型CIDP
多発性硬化症
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・初発症状としてのしびれは急性に発症することが多くさまざまな分布となる。脳血管障害や脊髄血管障害、多発性単神経炎などとの鑑別が問題となる
傍腫瘍神経症候群
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・ここに属する病型のなかで「しびれ」が主訴となるのは感覚運動型ニューロパチーであり、その90%は小細胞肺癌に合併する
非痙攣性てんかん重積
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・身体の特定の部分のしびれ発作を繰り返す
【STEP3】しびれの分布から鑑別をはじめる
・丁寧な問診と診察によってしびれの領域をなるべく正確に把握する
① 一肢に限局した感覚障害
② 手袋靴下型感覚障害
③ 多発単神経炎
④ 脊髄・馬尾による感覚障害
⑤ 大脳・脳幹の障害による感覚障害
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参考文献)
1. 山本大介「みんなの脳神経内科」中外医学社 2021
2.長谷川修 編「しびれ診療を根底から見直そう」レジデントノート vol.15 No.9 羊土社 2013
3.中西重清 德田安春 「プライマリケア外来診断目利き術」南山堂 2020
4.德田安春「ジェネラリスト診療が上手になる本」カイ書林 2011
5.日本神経治療学会「標準的神経治療 しびれ感 脊髄空洞症」医学書院 2017