嘔気・嘔吐

嘔気・嘔吐

    ・嘔気、嘔吐をおこす病態は多種多様であり、この症状だけで診断を進めるのは非常に困難
    ・したがって、他の症状などとの組み合わせで鑑別診断を進めていく
    ・ただし、嘔気・嘔吐が主訴になり得るものを主に述べる


【STEP1】リスクの高い疾患の除外

    ・急性冠症候群、くも膜下出血、胆嚢・胆管炎などハイリスクな疾患が含まれる
    ・高齢者の嘔気、嘔吐では必ず心電図をとるのは基本的な対応
    ・リスクの高い疾患は否定されるまでは、常に可能性は残っていると考える

    【症状、既往歴、身体所見】

    症状が突発性 冷や汗 頭痛や頸部痛 嘔気、嘔吐は早朝が最も強い
    発熱 活動的悪性腫瘍 片側の瞳孔散大 食思不振、体重減少 アルコール過剰摂取

    【検査所見】

    troponinT、CKなどの上昇 心電図変化 肝・胆道系酵素の上昇
    高血糖 低Na血症 高Ca血症

脳血管障害

冠動脈疾患

      ・心筋梗塞でトロポニンが陽性になるのは発症3〜4時間後

大動脈解離

副腎不全

上腸間膜動脈症候群

      ・痩せた患者の慢性再発性の心窩部痛、嘔気、嘔吐。10〜30歳の若年者に多いが高齢者でもある

急性胆嚢炎・胆管炎

糖尿病性ケトアシドーシス

アルコール性ケトアシドーシス

    ・慢性的なアルコール過剰摂取のある患者が、何らかの原因で急に食事や飲酒が出来なくなって発症

高Ca血症

脳腫瘍

急性緑内障発作

【STEP2】それ以外の疾患の鑑別

    ・妊娠可能な女性であれば、必ず妊娠の可能性を考える
    ・妊娠4週間以降であれば妊娠反応で診断できる
    ・保険適応ではないが550円程度と安価なので説明して承諾を得る

    【症状、既往歴、身体所見】

    発熱 心窩部痛の後に嘔気・嘔吐が出現 疑わしい食物摂取歴
    腹痛(間欠性あるいは持続性) 下痢

    【検査所見】

    尿沈渣で白血球あるいは細菌陽性 尿沈渣で潜血あるいは赤血球陽性
    肝・胆道系酵素やビリルビンの上昇 腹部単純X腺でのイレウス像

尿路感染症

尿管結石

ウイルス性・細菌性胃腸炎

虫垂炎

急性肝炎

イレウス・腸重積

非定型肺炎

マイコプラズマ肺炎
     ・非定型肺炎では呼吸器症状がなく、発熱、頭痛、消化器症状などを主訴とする場合がある

【STEP3】薬剤性の可能性を検討する

    ・薬物の処方歴を確認し、症状出現に先だって開始されたものがないか確認する

      参考文献)
      1. 中西重清 德田安春「プライマリケア外来診断目利き術」南山堂 2020
      2. 德田安春「ジェネラリスト診療が上手になる本」カイ書林 2011
      3.鈴木慎吾「外来診療の型」メディカル・サイエンス・インターナショナル 2020